【330冊目】畑村洋太郎「決定学の法則」
- 作者: 畑村洋太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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「失敗学」で名高い著者による、「決定」の研究。
そもそも「自ら決定すること」が重要とされるのはなぜか。著者は、現代の日本が置かれている状況から説明する。それによると、これまでの日本は西欧諸国を手本とし、キャッチアップすることが至上命題であった。その場合、物事の判断はすべて外国の先例に従っておればよく、それで大きな間違いはなかった。しかし、いまや日本はキャッチアップをそれなりに果たし、フロントランナーの仲間入りをしたといえる。そのことはすなわち、自ら主体的に判断し、決定する位置に立ったということを意味するという。
こうした認識のもと、本書は「決定」のプロセスを豊富な図表を駆使して明らかにしていく。特に面白く読めたのは、吉野家の「牛丼大幅値下げ」に至る安部社長の意思決定プロセスを分析するくだりと、さらに当の安部社長との対談で「仮説」を検証していくところ。特に、事前に期間限定で牛丼250円セールを行い、その「失敗」を的確に総括して本番の値下げにつなげていくところなど、まさに「決定学」「失敗学」のお手本である。また、安部社長が掲げた「一日当たり来客数900人」という目標の根拠が「現場感覚」というのも面白い。
また、実用面では第3章で挙げられている「決定の5大テンプレート」が参考になった。これは重要な決定する際に考慮すべき5つの要素であり、このそれぞれをチェックすることで重大な考え落としを防ぐことができるといえる。その5つとは「人」「モノ」「カネ」「時間」「気」である。「気」なんていうものが入っている(しかもけっこう重視されている)ところが、理屈や理論だけではない現場感覚のようなものをあらわしているようで面白い。