自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【326冊目】大塚泰男「自治体職員が知っておきたい危機管理術」

自治体職員が知っておきたい危機管理術

自治体職員が知っておきたい危機管理術

自治体に限らず、組織というものはそもそも、危機管理を苦手とするものであるように思う。

もちろん警察や消防など、危機管理のためにあるような組織は違うが、ふつうの組織の多くは、平常の業務を行うために組み立てられている。専門分化したセクション、会議や根回し、ボトムアップの意思決定システム・・・・・・。しかし、本書によると、危機状態においてはまったく別の要素が求められる。

特に大規模な自然災害や、いわゆる「不祥事」への対応などにおいては、全部署が一体となって対応し、不完全でもスピーディな情報提供が求められ、何よりトップダウンで迅速にものごとを決めなければならない。いわば、通常の業務システムがまるごとひっくり返るのである。しかもやっかいなことに、「危機」は目に見えないだけで、実はわれわれのすぐ隣、薄皮一枚をへだてたところにいつも存在している。「危機管理術」が求められるゆえんである。

本書はそういった「危機管理」の要諦を事案ごとに詳細に記述した本である。扱われるテーマは地震などの天災から不祥事、談合、さらには債権管理やペイオフ、議会対応(!)まで多岐にわたる。著者は市川市の職員であるとのことだが、それだけに内容は自治体の現場をしっかりと踏まえつつ、それを危機管理対応型にシフトしていくことを求めるものとなっている。特にトップマネジメントの重要性、マスコミ対応、あるいは危機を予防するための日常業務のあり方など、参考になる点はきわめて多い。