自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【291冊目】木佐茂男・逢坂誠二「わたしたちのまちの憲法」

わたしたちのまちの憲法―ニセコ町の挑戦

わたしたちのまちの憲法―ニセコ町の挑戦

日本最初の自治基本条例を制定した北海道ニセコ町を舞台に、条例成立までの過程をダイナミックに追った前半部と、自治基本条例をめぐる制度論をまとめた後半部からなる本。

とにかく面白いのが、自治基本条例成立までのプロセス。住民に意見を求め、外部者である他自治体の職員や学者からなる「自治プロ」(自治基本条例プロジェクトチーム)が草案をつくり、しかし最後はニセコ町の職員がみずからの町の条例として責任を持って仕上げていく。通常の条例制定プロセスとはまったく異なるなかで、試行錯誤を繰り返しつつそれぞれのメンバーが真摯に条例づくりに取り組んでいくさまは感動的ですらある。

大事なことは、この存在自体も内容(巻末に全条文とその説明が「手引き」として載っている)もきわめて先進的な自治基本条例が、実はそれまでのニセコ町の取り組みの延長線上にあるという点。条例ができて何が変わったかとの問いに対する「何も変わっていない」との答えが印象的であった。逆に言えば、単なるパフォーマンスや話題づくりでこの条例に取り組んでも、やはり「何も変わらない」だろうと思わされる。情報共有や住民の行政参加に不断に取り組んできた自治体だからこそ、こうした条例が意味をもつのだろう。

もうひとつ、妙に印象に残っているのが、逢坂町長の職員時代の話。「ここは自分のいる場所じゃない」と鬱々としていた頃から、自治体の仕事の面白みを知り、さらに外部とのかかわりを通じて次第に意識が目覚めていくまでの過程は、自分と引き比べるのもおこがましいながら、なんだか妙にじんときてしまった。しかし、その鬱々とした日々があったからこそ、地方自治トップランナーとしての今のニセコ町の姿があるのだろう。