【265冊目】鈴木大拙「東洋的な見方」
- 作者: 鈴木大拙,上田閑照
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1997/04/16
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 34回
- この商品を含むブログ (36件) を見る
「禅」をはじめとした東洋的な思想や発想のあり方を語ったエッセイ。
一見、西洋人に向けて語りかけているようであるが、実はわれわれ現代の日本人に向けられた内容であることに、読んでいるうちに気が付く。その核心にあるのは、一神教的・二元論的な、「分ける」捉え方の西洋思想と対比される、合一的で「分けない」東洋的な思想。特に禅の発想が縦横に織り込まれており、取り上げられているエピソードや例示もそうしたものが多い。
そんな禅の公案やエピソードが、本書では特に面白い。面白いだけでなく、それを解きほぐし、言葉になりがたいものを言葉に紡いでいく著者の説明力がまた素晴らしい。そもそも禅の思想とは本来的に言葉にならないもの、言葉を超えたところにその本義があるものであり、解説してしまっては何にもならないのだが、本書はそのあたりの機微を十分におさえたうえで、その「言葉になりがたい」というコトそのものを丁寧に、論理的に示していく。そうした方法をもちいることで、著者は、論理と言葉で組み立てられる西洋思想と、言葉を超えた領域をもつ東洋思想の架橋を成し遂げようとしているように思える。