hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【253冊目】金子郁容「コミュニティ・ソリューション」

「新版」が2002年に出たらしいが、図書館にあったのは1999年版だったので、読んだのはそちら。どこが変わったかは分かりません。

さて、表題の「コミュニティ・ソリューション」とは、文字通りコミュニティの自立的で相互編集的な関係を通じた問題解決をいう。本書では「共有地の悲劇」の解決策としての説明が分かりやすかった。メンバーが自己の利益を最大化しようとすることで全体の利益が損なわれるという「共有地の悲劇」の解決策としてこれまで採られてきたのは、権力(政治力や刑罰)等で解決しようとする「ヒエラルキー・ソリューション」や、経済的な仕組みを導入することで解決しようとする「マーケット・ソリューション」であった。しかし、実際にはこれらの方法で解決できない問題が、特に現代の世の中にはかなり存在する。本書で提唱されている「コミュニティ・ソリューション」は、こうした問題を解決する「第3の方法」である。

本書ではコミュニティ・ソリューションの例が数多く挙げられているが、特に象徴的に取り上げられているのが、識者のいないアンサンブル集団であるオルフェウス室内管弦楽団、世界中の無数のユーザーが無償で利用し、開発しつつあるOS、リナックスである。これらの共通点は、明確な指導者層などのヒエラルキー構造をもたないこと、参加者が主体的・自発的に参画することで形成されていること。こうした団体は阪神淡路大震災でボランティアたちをコーディネートした「市民の会」、町田にある「ケアセンター成瀬」など枚挙に暇がない。

著者は、一見脆弱にみえるこうした団体の構造や組織力が、実はそれゆえに独自の力を発揮し、既存の行政や企業には到底できない働きをなしうるという。その秘密を著者は「ルール・ロール・ツール」とまとめ、それらを通じて「関係のメモリー」であるソーシャル・キャピタルを蓄積していくことにあるとする。さらに議論はコミュニティとグローバリズムの関係にも及ぶ。特に環境問題は典型的な「共有地の悲劇」であり、コミュニティ・ソリューションの出番となるべき場面が多い。前に読んだパットナムの「哲学する民主主義」とも共通する内容であり、自治体職員としても学ぶべき点が満載された本である。