自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【208冊目】アレクシス・ド・トクヴィル「アメリカのデモクラシー」第一巻上下

草創期のアメリカにおける民主主義について、その国家的特性と関連付けながら論じ、民主主義の機能と本質について幅広く論じた本である。アメリカ合衆国という国家がきわめて特殊な成り立ちをもち、その国民の意識が他の国家に類例をみないありようをもっていることと、この国に民主主義が根付き、発展したことは決して無縁ではない。そのことをトクヴィルは、みずからのアメリカ滞在経験や母国フランスとの比較をもとに縦横に論じ、結果として「アメリカ」という土壌と「民主主義」という巨大な樹木の関係を明らかにしていく。

しかしそこから、単純に「アメリカ以外の国では民主主義は成立しない」と即断してはならない。トクヴィルも本書で警鐘を鳴らしているが、重要なのはアメリカの民主主義がアメリカの社会、風土、国民の慣習や意識に合致しているがために発展してきたということである。言い換えれば、どの国家においても民主主義はその国や国民の特性に合致したあり方で導入されなければならないのではないかと思う。このことは地方制度についてもいえる。アメリカの地方制度は、おそらく世界的にみてもおそろしく特殊かつ特異な来歴のうえに成り立っており、これを地方制度の見本として紹介することは危険ですらある。重要なのはアメリカの制度がその国民性と密接に関係していることを知った上で、日本というわれわれの国家における社会や慣習、歴史や風土、国民の意識のあり方を再認識し、そこから民主主義や地方制度などの諸制度を立ち上げていくことなのではないか。

だいたい、その国民性や社会風土的要素をろくに踏まえずに、他国のすぐれた要素をそのまま直輸入しようとする輩がこの国には大変多い。北欧型の高福祉国家、ドイツの環境政策、アメリカの地方自治制度など、たしかにその考え方や制度設計は大変優秀であるが、それだけが独立して存在しているのではないということに思いをいたしている論者はほとんどみない。そういうのは、もうそろそろやめにしたほうがよろしいのではないかと思う。なお、これは自治体間についても同じ。自分の自治体の地理的・歴史的条件や社会、住民意識のあり方などを踏まえずに、他の自治体で導入された先駆的な施策をそのまま持ってきてもダメなのである。