【193冊目】ヘルマン・ヘッセ「デミアン」
- 作者: ヘルマン・ヘッセ,実吉捷郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1959/04/05
- メディア: 文庫
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ヘッセといえば「車輪の下」など青春小説のイメージが強い。本書も、第2章までは秀逸な青春小説の顔をしている。もっとも、その中にすでに「光と闇」「カインとアベル」のモチーフが提示されており、第3章以降の、青春小説の枠組みを大きく外れた展開につながってゆく。そして、主人公シンクレールの家庭に代表される清浄な「光」に対して、カイン的なもの、世界のダークサイド的な面が徐々に主人公の心に食い入ってゆく。その水先案内人となるのが、デミアンという不思議な少年である。
その後、デミアンと別れた主人公は、光と闇を架橋する存在として独自の神(アプラクサス)を想像するなど、さまざまな模索を続ける。私には、この過程とは主人公シンクレールがデミアンを内部化し、自らがデミアンとなろうとする道程であったように読めた。他にもデミアンとの再開、デミアンの母親への奇妙な愛などを通して、成長しつつある主人公の葛藤と自己発見をえぐるように描いた小説。