自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【188冊目】宮城谷昌光「沈黙の王」

沈黙の王 (文春文庫)

沈黙の王 (文春文庫)

古代王朝〜春秋戦国時代初期を舞台とした小説集。短編とはいえそれぞれにかなり読みでがある。表題作の「沈黙の王」がやはり独特。言語障害をもって生まれた王子が言葉を探す旅に出るという設定は典型的な貴種流離譚のスタイルだが、その結末として「文字という言葉」を発見するというところに寓話的な深さを感じる。語られる言葉と刻まれる言葉の対比には、言語というものの本質がうかがえて興味深い。