hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【154冊目】井熊均「図解よくわかる公共(パブリック)マーケット・ビジネス」

公共部門のいわゆる民間化について、受け手である「民間」サイドに立ってその参入をうながす本。公共の立場から民間化の是非を問うのではなく、民間化を前提として、受け手として、そのリスクと可能性を考えるものとなっている。

その背景には、本書でも指摘されているとおり、もはや民間のノウハウを導入してコストの低減を図らざるをえないほどの、国・自治体の双方におけるまったなしの財政危機がある。これは行政にとってはまぎれもなく「危機」であるが、企業にとってはむしろ、これまで官によって独占されていた豊穣な(なんと20兆円にのぼるとされる)マーケットが開放されるという意味で、大きな「チャンス」であるといえよう。本書は言ってみれば、そのチャンスへの「乗り方」を指南するガイドである。

本書は、われわれ行政サイドにとっても参考となる点が多い。諸外国の「民間化」の例が紹介されているほか、「廃棄物処理」「上下水道」「高齢者施設」「道路」など、10以上の分野ごとに事案を分析し、マーケットの規模と可能性、ありうべきビジネスモデルをデザインしており、それはそのまま行政の各分野を民間の立場から分析した格好の資料となっている。しかし、もっとも参考になるのは、われわれが今後、いやおうなくパートナーシップを結び、あるいは競争相手とならざるをえない民間サイドの考え方や方法論そのものを本書から読み取れることであろう。それは民間化を行う場合はもちろん、直営で施設や事業の運営をする場合であっても、学ぶべき点を多く含んでいると思われる。

民間化のデメリットについての論及が甘いのは本書の性質上仕方ないが、「反対側」から見たパブリック・マーケット入門書としてはとてもわかりやすく、整理されている。自分の担当する分野がマーケットとしていくらに相当するのか見るだけでも、その事業を見る目が変わることは請け合いである。