自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【130冊目】大前研一「ニュービジネス活眼塾」

これから起業しようとしている人々を対象に、新たなビジネスを構想するための構想力、着眼点などを語ったもの。起業家対象の「アタッカーズビジネススクール」で行われた講義が中心となっている。

講義が行われた(あるいは原稿が書かれた)のは5〜10年前なので、内容はその時点から将来を見通そうとするものとなっている。驚いたのは、その予測がかなりの精度で的中していることである。政府が光ファイバーによる情報ハイウェイ構想を立ち上げ、官民あげてIT推進に盛り上がっている中で、既存の電話回線を利用したADSLの隆盛を予測していることなどがその一例といえよう。

また、著者自身が考えたビジネスアイディアが本書にはちりばめられているが、着眼点の多彩さと構想の豊かさ、それを支えるロジックの堅牢さのバランスはさすがというほかない。ほんのわずかな日常の気づきからビッグビジネスを立ち上げる辣腕コンサルタントの手の内を、本書は惜しげもなく明かしている。著者は、アイディアは1000個思いついてやっとそのうちの10個程度がモノになるという。それはつまり、アイディアを1000個発想し、具体的なビジネスとして構想できる力が必要だということだ。そのための構想力を鍛えるメソッドが、本書の核となっている。

事業構想力が必要なのはビジネスだけではない。自治体も、地域にあった独自の発想や、それを政策レベル、事業レベルで展開できる構想力、行動力が必要な時代である。その意味で、本書は自治体職員にとってもヒント満載の一冊である。