hachiroetoのものぐさ遊読帖

自治体職員。仕事は福祉系。読書は雑食系。

【56冊目】原田尚彦「地方自治の法としくみ」

新版 地方自治の法としくみ

新版 地方自治の法としくみ

これまで書かれた地方自治関連のテキストは、総務省を中心とするいわゆる中央官僚や元・中央官僚の学者によるものが多く、内容も、いわゆる国の公定解釈を概説するというスタンスのものが多かった。しかし、本書はやや趣きが異なる。著者はもともと行政法学者であり、地方自治法行政法分野の一部ではあるが、メインの研究分野ではない。したがって本書は、地方自治プロパー以外の者の視点から地方自治の制度と現状を再点検する内容となっている。

本書が類書と異なるのは、基本的な制度解説だけではなく、それに対し、個々の制度趣旨や地方行政の実態を踏まえた具体的な検討が行われ、著者個人の意見や問題意識がきちんと提示されているところである。誰が言ったか分からないような内容にはなっていない。特に、自治体の中にいて当たり前と思っていたこと、あるいは特に問題意識をもったことすらないことが、本書では制度と現状の乖離が生じている事例としていくつか挙げられており、身につまされる部分も多かった。これぞ学者の仕事という印象である。