自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【35冊目】平松守彦「地方からの変革」

「地域力」と、それを基礎付ける「人間力」をキーワードとした、実践的な地方自治論・地方分権論。著者は大分県の名物知事で、「グローカル」の語を広めた平松守彦氏。

グローカル」とは「グローバル」と「ローカル」を組み合わせた造語であるが、その語のとおり、「一村一品運動」などの一地方での取り組みが豊かなグローバリズムに直結することを、この本は豊富な具体例から明らかにしている。

珍しいのは、類書にありがちな国への不満・批判があまりみられないこと。むしろ、本書において地方の取り組みの広がりを追う中で、国の存在感はきわめて希薄になっていることに気づかされる。そのことは、逆説的なかたちで、それぞれの地方が十分な「地域力」を備え、独自の文化・経済を発信する力をもつことが、相対的に国の役割を縮小化させうることを示しているように思える。

とにかく読んでいて、大分県とその市町村が行っている取り組みの多様さに驚かされる。もっとも、大分県だけが特別ではなく、いずれの地方も、自身のもつ可能性を追求することで、同じように豊かな「地域力」を備えうるのだろう。そのことを示した本書は、日本の地方自治の将来性について、ひとつの大きな可能性を描いたものといえよう。