【24冊目】玉村雅敏「行政マーケティングの時代」
- 作者: 玉村雅敏
- 出版社/メーカー: 第一法規株式会社
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 単行本
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現在、それなりの会社で「マーケティング」を行っていないところのほうが少ないと思われるが、反面、行政でこれを実施しているところはほとんど見られない。
もちろん、ほとんどの自治体で市政モニターやアンケート調査などで住民の意見を聞くという活動は実施しておられよう。しかし、マーケティングはその実施・分析手法の点でこれらと大きく異なるものであり、適切に実施されさえすれば、その威力もまた絶大であることが本書を読むと分かる。
本書は主に窓口業務を対象としたマーケティングの実施や結果等を扱っている。その核となっているのが、第2部第2章の「自治体窓口白書」である。ここでは、全国の自治体からのアンケートや多摩地区の自治体への詳細な調査をもとに、窓口対応に関する緻密なマーケティングを行い、それをもとにより良い窓口サービスのあり方を探っている。
その展開は行政に携わる者としては非常にエキサイティングであり、住民サービスについての行政側の思い込み、住民に「良かれ」と思う方向性が当の住民にとっていかに的外れであるかが、詳細なデータの裏付けをもって示されてしまう。これまでの住民サービスとはいったい何だったのかと考えさせられた。
当然のことであるが、マーケティングとは「方法論」「過程」の問題であり、行政サービスという「結果」そのものではない。先進的といわれるすぐれた行政サービスの多くは、トップの意向か、意欲ある現場の職員の発案をもとに行われている。これも良いものがたくさんあるが、おしなべていえば、悪く言えば思いつきの域を出ない。いわば、実施にいたる「過程」はファジーで偶発的な点に大きく依存するが、最終的には良い「結果」が生まれたというものである。
これに対してマーケティングは、「過程」を確保することで、「結果」すなわち住民サービスの向上を導き出すものであり、万能視するのは危険だが、適切なデータ収集・分析とプロセスの透明性がしっかりと確保されていれば、住民自治の時代にふさわしい、非常にすぐれた行政手法となるのは間違いないだろう。