【20冊目】エリック・ホブズボーム「21世紀の肖像」
- 作者: エリックホブズボーム,アントーニオポリート,Eric Hobsbawm,Antonio Polito,河合秀和
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2000/09
- メディア: 単行本
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未来は過去の延長線上にある。してみれば、過去を記した歴史を読み解けば、未来を描くこともできるのではないか。歴史家の使命とは、あるいはそのあたりにあるのかもしれない。
本書の著者であるホブズボームは20世紀を代表する歴史家のひとり。主著に19世紀を描いた3部作「市民革命と産業革命」「資本の時代」「帝国の時代」、20世紀を扱った「20世紀の歴史 極端な時代」があり、本書はいわば19世紀、20世紀に続く「21世紀」をテーマとした本といえる。
といっても、本書のメインはやはり「歴史」についての透徹した視点である。コンパクトな分量の中で、歴史という膨大な書物の中から21世紀につらなる重要な部分を提示し、その意味を解き明かす過程は非常にエキサイティングであり、歴史の面白さが再認識できる。また、今後の世界に対する大胆な予測もなされているが、安易な期待や悲観によることなく、冷たいまでのリアリズムと、確固とした骨太の知性に裏打ちされたものであり、当たり外れとかいう次元ではなく、現時点での未来への展望としては最高のものがあると思う。
なお、本書は911やイラク戦争の前に刊行されているが、その展開を暗示しているかにみえる部分もあって驚かされる。 なお、サッチャーに代表される公的部門の民営化などに関してもページが割かれ、著者は公的部門の民営化について歴史家ならではの視点から総括するとともに、公的部門の重要性を指摘している。安易な民営化論、市場主義理論が跋扈する現在、耳を傾けるべき発言であろう。