自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【5冊目】日野原重明・乙武洋匡「65 27歳の決意・92歳の情熱」

65 27歳の決意・92歳の情熱 対談・日野原重明×乙武洋匡

65 27歳の決意・92歳の情熱 対談・日野原重明×乙武洋匡

タイトルの「65」について、冒頭に説明がある。92−27=65、つまり二人の対談者、乙武洋匡氏と日野原重明氏の年齢差ということらしい。これだけ年齢が大きく離れていると、当然ながらものの見方、考え方は大きく異なる。本書の二人も例外ではない。

本書が素晴らしいのは、その違いを乗り越えてお互いがお互いのことを尊重し、理解しよう、学ぼうと努めているところだ。特に日野原氏は、自分よりはるかに年下で人生経験も少ない乙武氏に対してきちんと正面から向き合い、本心から理解し合おうとしている。なかなかできないことではないかと思う。

一方の乙武氏であるが、実はベストセラー「五体不満足」をはじめ、彼の書いたものを読んだ事がなかったので、そのことばに接するのは本書がはじめてだったが、同世代にこれほどバランスが良く、本質的なものの見方ができる人がいるのかと驚かされた。その知恵の深さと直観のするどさは、日野原氏に匹敵している。これまでの体験量の差を考えると、これはすごいことだと思う。

そして、日野原氏が日本の現状や将来についてやや悲観的であるのに対して、乙武氏の見方はかなり楽観的だ。それも、しっかりした考えに裏打ちされた楽観である。こういう考え方ができる人は、案外少ないのではないか。話題は多岐にわたっているが、総じて、読んでいて学ぶことの多い対談だった。おすすめ。