自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

【2806冊目】イアン・スチュアート『若き数学者への手紙』

若き数学者への手紙 (ちくま学芸文庫)作者:イアン スチュアート筑摩書房Amazon 数学エッセイの名手イアン・スチュアートが、メグという女性に向けた手紙、という形式の一冊だ。メグとの関係ははっきり書いていないが、親戚のおじさんが同じ道に進んだかわい…

【2805冊目】小川洋子『琥珀のまたたき』

琥珀のまたたき (講談社文庫)作者:小川 洋子講談社Amazon その3人のきょうだいの生活は、いとおしくて、せつなくて、こわれやすいものでした。末の娘を亡くした母は、娘は「魔犬」によって命を奪われたと思い込み、残りの3人の子どもを、別荘に住まわせ、そ…

【2804冊目】ブリッタ・ベンケ『オキーフ』

オキーフ NBS-J (ニューベーシック・シリーズ)作者:ブリッタ・ベンケタッシェン・ジャパンAmazon 本書はアメリカの画家ジョージア・オキーフのハンディ・サイズの画集です。「ニュー・ベーシック・アート・シリーズ」というシリーズの一冊で、どうやら版元は…

【2803冊目】菊地大樹『日本人と山の宗教』

日本人と山の宗教 (講談社現代新書)作者:菊地 大樹講談社Amazon 山は異界。山中他界。神は山から里にやってくるのであり、人が山に入る時は、それなりの儀式や儀礼が必要。これまで、主に民俗学において、山はそのように捉えられてきました。また、山は修験…

【2802冊目】深沢潮『海を抱いて月に眠る』

海を抱いて月に眠る (文春文庫 ふ 47-1)作者:深沢 潮文藝春秋Amazon 「在日文学」という言い方は大雑把すぎてあまり好きじゃないが、こういう本を読むと、やはりこれは「在日文学」という表現が一番ふさわしいと思えてくる。頑固で横暴なだけと思っていた父…

【2801冊目】今村夏子『星の子』

星の子 (朝日文庫)作者:今村 夏子朝日新聞出版Amazon 新興宗教にハマっていく両親、家を飛び出した姉、学校や宗教のコミュニティでのやりとり。どれも、中学生の「わたし」の視点で描かれています。会社員だった父は仕事を辞め、家は引っ越しを繰り返すたび…

【2800冊目】町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』

52ヘルツのクジラたち作者:町田そのこ中央公論新社Amazon キリ番です。だからといって特になにもないのですが、キリ番にふさわしい本になりました。それほどに、心に沁み入る本でした。こういう本が売れる今の日本は、まだまだ捨てたもんじゃありません。主…

【2799冊目】篠田桃紅『その日の墨』

その日の墨 (河出文庫)作者:篠田 桃紅河出書房新社Amazon 100歳を超えてなお現役書家として活躍し続けた著者による随筆です。ちなみに昨年3月、お亡くなりになりました。享年107歳。合掌。この人がすごいのは、単に高齢になっても書を続けたというだけでな…

【2798冊目】瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』

そして、バトンは渡された (文春文庫)作者:瀬尾 まいこ文藝春秋Amazon 優子の最初の母は亡くなり、父が再婚。2番目の母が来たところで、最初の父が海外赴任。2番目の母と暮らしていたが、再婚。2番目の父の家に引っ越す。その後、2番目の母は家を出て、…

【2797冊目】伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)作者:伊坂 幸太郎東京創元社Amazon 大学に入ったばかりの「僕」が、隣の部屋に住む青年に「一緒に本屋を襲わないか」と言われる「現在」のパートと、ペットショップに勤める「わたし」とブータン人のドルジが「ペ…

【2796冊目】砥上裕將『線は、僕を描く』

線は、僕を描く作者:砥上裕將講談社Amazon ひょんなことから水墨画の世界に飛び込んだ大学生、青山霜介の成長を描いた一冊です。水墨画の奥深さをめぐる絶妙のアート小説で、両親を事故で亡くした主人公の精神の回復の物語で、水墨画の賞にまつわるバトル小…

【2795冊目】まちゅまゆ『ヒトを食べたキリン』

ヒトを食べたきりん作者:まちゅまゆ集広舎Amazon 幻想的でグロテスク、でもどこかかわいい「まちゅまゆ」さんの絵が、さいきん気になっています。個展は終わってしまったようなので、まちゅまゆさんの描いた絵本を読んでみました。人づきあいが不器用なキリ…

【2794冊目】桐野夏生『日没』

日没作者:桐野 夏生岩波書店Amazon 「社会に不適合」とされる作家を収容し、矯正させる施設が舞台のディストピア小説です。監禁され、支配される恐怖が、とにかくこれでもかとばかりに描かれます。特に食事やトイレなどの生活のディテールがおそろしくリアル…

【2793冊目】しりあがり寿『方舟』

方舟作者:しりあがり寿太田出版Amazon 降り続く雨。水位は次第に上昇し、家が、ビルが、人が、少しずつ水に沈んでいく。不安を直視できず、バカ騒ぎを続けるテレビ。棒読みの「公式発表」を繰り返す政府。そんな中、突然出現する「方舟」。ハミガキのキャン…

【2792冊目】瀬尾まいこ『夜明けのすべて』

夜明けのすべて作者:瀬尾まいこ水鈴社Amazon 以前から気になっていた本です。障害がひとつのテーマと聞いていたので、ぜひ読まねば、と思っていました。主人公は、PMS(月経前症候群)の藤沢さん、パニック障害の山添くん。二人とも、周囲になかなか理解され…

【2791冊目】乙一『銃とチョコレート』

銃とチョコレート (講談社文庫)作者:乙一講談社Amazon ロイズ。ゴディバ。リンツ。ドゥバイヨル。モロゾフ。ブラウニー。ガナッシュ。共通点は何か、わかりますか?答えは、チョコレート。どれもチョコのブランドか、チョコを使った菓子の名前です。そして、…

【2790冊目】秋田麻早子『絵を見る技術』

絵を見る技術 名画の構造を読み解く作者:秋田麻早子朝日出版社Amazon 「君は見ているけど、観察していないんだ、ワトソン君」シャーロック・ホームズの名台詞が冒頭に掲げられているのは、ダテではない。本書が解説しているのは、絵を「観察するように見る」…

【2789冊目】國分功一郎『はじめてのスピノザ』

はじめてのスピノザ 自由へのエチカ (講談社現代新書)作者:國分功一郎講談社Amazon この間、熊谷晋一郎との対談を読んで気になったので、単著を読んでみました。それに、スピノザは、今までとっつきづらいイメージがあって敬遠していたのですが、対談の中で…

【2788冊目】竹本健治『涙香迷宮』

涙香迷宮 (講談社文庫)作者:竹本健治講談社Amazon ※ややネタバレに近い記述があります。未読の方はご注意ください。いろは歌、というのがありますね。いろはにほへと、ちりぬるを・・・・・・という、旧仮名遣いの48音すべてを一度だけ使った「歌」のことです。本…

【2787冊目】フローベール『三つの物語』

三つの物語 (光文社古典新訳文庫)作者:フローベール光文社Amazon フローベール晩年の短編3篇が収められています。フローベールは長編小説が有名ですが、短編も素晴らしいですね。中でも「聖ジュリアン伝」はものすごい。実はこの作品はポプラ社の「百年文庫…

【2786冊目】森田果『法学を学ぶのはなぜ?』

法学を学ぶのはなぜ?作者:果, 森田有斐閣Amazon 高校生向けの法学の模擬授業がもとになっているとのことですが、むちゃくちゃわかりやすいです。私が高校生の頃にこの本を読んだら、法学部に行っていたかもしれません。いろんな事例を引きながら、法学のおも…