自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【2193冊目】ジム・トンプソン『残酷な夜』

「だが友よ、ほかのどこに行こうというのだね? この、絶えず狭まっていく挫折の輪の中で、どこに逃げ場があるというのだ?」(ジム・トンプソン『残酷な夜』p.308) 残酷な夜 (扶桑社ミステリー) 作者: ジムトンプスン,Jim Thompson,三川基好 出版社/メーカ…

【2192冊目】向田邦子『父の詫び状』

「思い出はあまりに完璧なものより、多少間が抜けた人間臭い方がなつかしい」(p.41) 父の詫び状 <新装版> (文春文庫) 作者: 向田邦子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2005/08/03 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 79回 この商品を含むブログ (113件) …

【2191冊目】田山輝明『成年後見読本』

成年後見読本 第2版 作者: 田山輝明 出版社/メーカー: 三省堂 発売日: 2016/02/12 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 成年後見制度の概要をわかりやすくまとめた一冊。単なる制度説明にとどまらず、改正前民法との比較、諸外国の制度の紹介、さら…

【2190冊目】杉浦日向子『百物語』

古より百物語と言う事の侍る 不思議なる物語の百話集う処 必ずばけもの現われ出ずると 百物語 (新潮文庫) 作者: 杉浦日向子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1995/11/30 メディア: 文庫 購入: 14人 クリック: 56回 この商品を含むブログ (98件) を見る ホラ…

【2189冊目】宮城公博『外道クライマー』

「右手は今にもちぎれそうな草を鷲掴みにし、左手は粘膜たっぷりのカエルの穴蔵に突っ込む。両足は泥だか岩だか分からないようなものに乗せ、なんとか手を伸ばして這い上がろうとすると、次に掴まなければならないのはヘビがとぐろを巻いている細い枝だ。下…

【2188冊目】大澤真幸『思考術』

「考えることは書くことにおいて成就する」 思考術 (河出ブックス) 作者: 大澤真幸 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/12/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (7件) を見る 考える。そのために、読む。著者は、書物を「思…

【2187冊目】ロベルト・ボラーニョ『ムッシュー・パン』

ムッシュー・パン (ボラーニョ・コレクション) 作者: ロベルト・ボラーニョ,松本健二 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2017/01/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 不穏な空気。不条理な物語。謎めいたスペイン人。会うことのできない患者。う…

【2186冊目】吉田敦彦『日本人の女神信仰』

日本人の女神信仰 作者: 吉田敦彦 出版社/メーカー: 株式会社 青土社 発売日: 2012/10/10 メディア: オンデマンド (ペーパーバック) この商品を含むブログを見る 「現在の人類の宗教と神話は明らかに、万物の母である尊い女神として神格化された大地を崇める…

【2185冊目】宮本太郎『共生保障』

共生保障 〈支え合い〉の戦略 (岩波新書) 作者: 宮本太郎 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2017/01/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る 「共生」がキーワードになっているが、内容としては前著『生活保障』の延長線上にある一冊だ。制…

【2184冊目】佐藤究『QJKJQ』

QJKJQ 作者: 佐藤究 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/08/09 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (6件) を見る 「家族全員が猟奇殺人者」という設定で「うげっ」と思った人こそ、一読をおススメしたい。いかにもな設定を次々と裏切り続けるプロット…

【2183冊目】森見登美彦『美女と竹林』

美女と竹林 (光文社文庫) 作者: 森見登美彦 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2010/12/09 メディア: 文庫 購入: 19人 クリック: 336回 この商品を含むブログ (72件) を見る エッセイというか、メタエッセイというか。エッセイはふつう一人称だが、これは三人…

【2182冊目】マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

プロテスタンティズムの世俗内的禁欲は、所有物の無頓着な享楽に全力をあげて反対し、消費を、とりわけ奢侈的な消費を圧殺した。その反面、この禁欲は心理的効果として財の獲得を伝統主義的倫理の障害から解き放った、利潤の追求を合法化したばかりでなく、…

【2181冊目】高野秀行『イスラム飲酒紀行』

イスラム圏は異教徒も「込み」で成立していたのではないか。そう考えないと、イスラム圏のムスリムは、今でも異教徒に(略)驚くほど寛容で気遣いがあることが説明できない(高野秀行『イスラム飲酒紀行』p.314「あとがき」より) イスラム飲酒紀行 (講談社…

【2180冊目】星野道夫『旅をする木』

「東京での仕事は忙しかったけれど、本当に行って良かった。何が良かったかって? それはね、私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない、それを知ったこと・・・・・・」(星野道…

【2179冊目】山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』

ヴェーバーはキリスト教文化が内包する合理化の普遍性を一貫して強調したのです。そして、その普遍性にこそ恐るべき運命的な力が宿っていること、ここに警告を発していたのです(山之内靖『マックス・ヴェーバー入門』)p.220 マックス・ヴェーバー入門 (岩…

【2178冊目】デニス・ルへイン『夜に生きる』

「おれたちがサービスする客は(略)夜を訪ねる。だが、おれたちは夜を生きてる。客はおれたちの持ち物を借りる。つまり、うちの砂場で遊ぶわけだから、こっちはそのひと粒ひと粒から利益を得なきゃならない」(デニス・ルへイン『夜に生きる』p.37) 夜に生…

【2177冊目】阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』

「これまでの歴史の書物では、事件の流れを追えば、一応歴史は理解されたと考えられていたように思われます。けれども私はただ事件の流れを追うだけでなく、理解し、解りたいと考えているのです。解るということは自分の奥底で納得するということですから、…

『論語』の寂莫

「子、川の上(ほとり)に在りて曰わく、逝く者は斯くの如きか。昼夜を舎(や)めず(孔子)」≪訳≫先生が川のほとりでいわれた。「すぎゆくものはこの(流れの)ようであろうか。昼も夜も休まない」 論語 (岩波文庫 青202-1) 作者: 金谷治訳注 出版社/メーカ…

【2176冊目】アンドレア・ウルフ『フンボルトの冒険』

「自然は「生命の網」であり、地球規模の力なのだとフンボルトは気づいた。ある研究仲間がのちに述べたところによると、フンボルトはすべてが「千本の糸」でつながっていると理解したはじめての人だった。この新しい自然観が、こののち人びとが世界を見る目…

狩野博幸『もっと知りたい河鍋暁斎』

「少なくとも、江戸から明治を生きた画家のなかで、暁斎ほど筆の力を持った者はひとりもいない」(狩野博幸『もっと知りたい河鍋暁斎』p.88) もっと知りたい河鍋暁斎―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) 作者: 狩野博幸 出版社/メーカー: 東京美…