自治体職員の読書ノート

自治体で働くソーシャルワーカーが、読んだ本を紹介します。

【2484冊目】塩浜克也・米津孝成『疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業』

 

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

 

 

役所に限らず、どんな職場でも「最初の先輩」はたいせつだ。特に新人職員にとっては、社会人のイロハや組織のルールをわかりやすく教えてくれる人がいるかどうかは決定的。だが、運が悪いと、周りが忙しすぎて面倒を見る余裕がなかったり、先輩自身が基本的なことを知らないこともある。先輩を自分で選べない新人職員にとって、その違いは大問題だ。

そんな「迷える新人」にとって、本書は救世主となりうる一冊だ。なにしろ仕事の基本から組織、法律、議会対応まで、最低限知っておくべき基本の知識がコンパクトにまとまっているのだから。自治体ごとのローカル・ルールはあるにせよ、地方自治体共通の基礎知識はこの一冊で十分だ。

たとえば「1時限目 公務員になったら」では、「職員の行為は『自分ではこう思っていた』ではなく『周囲からこう見られた』という側面から評価」(p.19)されるという点が強調されている。さらにクレーム対応のくだりでは、それが「職員を見る側(住民)と見られる側(職員)との間の意識の『ズレ』」(p.27)に起因することが明らかにされる。

この「ズレ」については、実際は新人どころか、ベテランになればなるほど鈍感になっていく傾向があり、なかなか困ったものなのだが、だからこそ新人の頃に、この点を自覚しておくことが大事なのだ。だが、そうは言っても窓口や電話で戸惑うことが多いのが新人職員。そんな時のための具体的なアドバイスもしっかり書かれている。

とりわけ唸らされたのが「窓口でお客さんが感情を爆発させても、その原因は対応したあなたではなく、『事態をめぐる状況』であると考えると、心理的な負担も多少は軽減するのではないでしょうか」(p.31)という指摘。確かに、自分という人間が責められている、攻撃されていると感じると、窓口対応はかなりツライものになる。そんな人にとって、この指摘はかなり救いになるのではないか。

「2時限目」以降は最低限の基礎知識が網羅されており(もっとも、これが「最低限」と思える自治体職員はどれほどいるだろうか?)、中でも情報公開や審査請求などの具体的な場面ごとにまとめられている「3時限目」はベテラン職員にとってもありがたい内容だ。4時限目「お金編」では、なんと随意契約用の起案チェックシートまでついており、至れり尽くせりとはまさにこのこと。今までありそうになかった「頼れる先輩」としての基本の一冊だ。