【本以外】毎日新聞4月7日朝刊
「3歳から14歳まで、継母から虐待を受けていた」という質問に対する高橋源一郎の回答がなんとも残念というか、方向性を外していたのでピックアップ。ちなみに回答部分は有料記事扱いとのことなので、ここでの紹介は差し控えるが、気になる方はお金を払うか紙面で見てほしい。
この手の「質問」が人生相談には時々出てくるが、そもそも、シロートの作家先生がこの種の質問に的確に回答できるほうがおかしいし、こういう質問に応えさせてはいけない。寄せられた質問が、人生相談で済む内容なのか、プロの対応が必要なのか、人生相談コーナーの担当者はしっかり判断できなければいけない。
この質問者さんにまず伝えるべきなのは「そんなつらい記憶や思いを抱えて、よくぞ、ここまで生きてきてくれましたね」「そんなつらい記憶のことを、よく言葉にして、伝えてくれましたね」という気持ちであろう。この人はサバイバーなのだ。そのことをねぎらい、感謝し、讃えるのが最初。
次に言葉をかけるとしたら、「虐待のことを忘れる必要はありません」「継母を許す必要もありません」「そういう気持ちになるのが当たり前で、あなたは暗くもひねくれてもいません」ということだと思う。前向きに生きるとは、過去を忘れることでもないし、許すことでもない。忘れられず、許せない自分そのものを認めるところからしか、その先の人生は開けない。
奇しくも同じ毎日新聞4月7日朝刊の社会面には、性虐待サバイバーの方の記事もあった。なぜかこちらは全文ネットで読めるようだ。
この記事で私が一番衝撃的だったのは、勇気を振り絞って実父からの性的虐待を母に訴えた時、返ってきた言葉が「許してあげて」というものだった、というくだりだった。いやいや、違うでしょう。まずは娘に「許して」と言うべきでしょう、と即座に突っ込んでしまったが、それはともかく、奇しくもこの記事に書かれた宮本さんの言葉が、上の「人生相談」の質問者さんへの最良の回答になっている。意図的ではないと思うが、紙面をまたいだピアカウンセリングが起きていた。