自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2235冊目】圓生和之『一番やさしい地方公務員制度の本』

 

一番やさしい地方公務員制度の本 (一番やさしいシリーズ)
 

 

「どうして公務員はこんなにも人事異動が気になるのでしょうか。筆者は、遅い選抜のもと、仕事で報いる方式の人事異動がそうさせるのではないかと考えています」(p.66)

 

著者は兵庫県の人事課に10年在籍していた方とのこと。そのためか、本書は単なる条文の引き写しにとどまらず、制度の沿革から日本の公務員制度の特徴、あるべき地方公務員の姿までを幅広く描き出す一冊になっている。

特に、上で引用した「遅い選抜」「仕事で報いる」という説明には深く納得するものがあった。民間と比べて、日本の地方公務員は一般に出世が遅い。同期間で最初に「昇進する人としない人」の差がつくのは、アメリカやドイツでは3~4年。日本でも、スーパーなど大卒を多く採用する業種では同じくらい。平均でも7~8年で差がついてくる。それに対して、ある県の公務員の場合、これが14年くらいになるという。そこまで遅くなくとも、入庁10年目くらいまでは、同期横並びでヒラ職員、という自治体は多いのではないだろうか。

なぜこうした「遅い選抜」が行われるのか。著者は、地方公務員の人事異動の特徴が「仕事で報いる人事」であることがその理由であると指摘する。優秀な職員、高い業績を上げた職員に対して、民間では給与アップや昇進で報いるが、地方公務員は「人事異動の結果」で報いる。良い仕事ができると評価された職員は、次の異動先ではさらに難度の高い仕事が与えられ、その積み重ねが人事評価につながってくるのである。

人事異動については、人事経済学にいう「絶対的優位性」も面白い。これは、例えばAさんのあげうる成果が企画10、広報8で、Bさんは企画9、広報6だとする。この場合、AさんとBさん、どちらを企画部門、どちらを広報部門に配属するのが、組織全体として最適か、というような場面で登場する考え方である。

Aさんにしてみれば、自分が企画部門に行った方が高い成果があげられるのだから、自分が企画に配属されるべきだ、と思うだろう。だが、組織全体のパフォーマンスという点では、Aさんを広報、Bさんを企画に配属したほうがベターなのだ。その場合、成果を合計すると8(A:広報)+9(B:企画)=17となる。一方、Aさんを企画に配属すると、10(A:企画)+6(B:広報)=16となり、前者のほうが全体の成果は高くなるからである。

う~ん。こういう「人事ネタ」が面白く思えるのは、やはり私も人事異動が気になってしょうがない地方公務員だからなのだろうか。人事経済学の古典という『人事と組織の経済学』も読んでみようかな。

 

人事と組織の経済学

人事と組織の経済学