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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2213冊目】D・P・ウォーカー『ルネサンスの魔術思想』

 

ルネサンスの魔術思想―フィチーノからカンパネッラへ (ヴァールブルク・コレクション)

ルネサンスの魔術思想―フィチーノからカンパネッラへ (ヴァールブルク・コレクション)

 

 

「一 石、金属など――月に属する
 二 植物、果物、動物――水星に属する
 三 粉、蒸気、香――金星に属する
 四 言葉、歌、音――太陽に属する
 五 情緒、想像力――火星に属する
 六 推論的理性――木星に属する
 七 知的観想、神的直観――土星に属する」(p.23)

 


マウシリオ・フィチーノ。ジョヴァンニ・ピーコ。プレトン。ラザレッリ。トリテミウス。アグリッパ。パラケルスス。ゴーリ。ポンポナッツィ。テレジオ。ドーニオ。ペルシオ。フランシス・ベイコン。そしてカンパネッラ。

この異様な「人名録」のうち、あなたは何人を知っているだろうか。半分以上知っているという人は、よほどの魔術ファンか、ルネサンス・フリークに違いない(ちなみに私は、名前だけ知っているというのも含めてフィチーノ、アグリッパ、パラケルススの3人だった)。だがこれこそが、ルネサンスの「もう一つの顔」を彩った魔術師たちや、その批判者たちの系譜なのである。

そうなのだ。ルネサンスとは単なる「ギリシア・ローマ回帰」「理性の時代」「人間中心主義」だけではないのである。それは神秘思想と魔術思想の百花繚乱の時代であり、その立役者たちが、冒頭に並べた連中だったのだ。

特に重要なのが、プラトンラテン語に翻訳し、プラトン・アカデミーの中心人物ともなったマルシリオ・フィチーノフィチーノは単にプラトンの文献を翻訳しただけではなく、プラトン思想を魔術と神秘で色付けした「新プラトン主義」を提唱、独自の思想を展開した。それは冒頭の引用のように、星辰のはたらきによって世界を把握し、「精気」を重視して、人間と天体を独自の理論によって結びつけるものだった。

本書はこうしたルネサンス期の魔術思想の系譜を辿った一冊だ。今読めばまるっきり荒唐無稽だが、人間と世界の重なり合いのダイナミズムを大胆に描き、当時の魔術思想がどのようなものであったかを窺い知ることのできるものになっている。キリスト教とかかる「魔術」のせめぎあいも、非常に興味深いものがある。

のっけからフィチーノの『(三重)生命論』に始まり、議論もディープでこそあれ決して初学者にはやさしくない。だがそれでも、ルネサンスの「もう一つの顔」について知りたければ、本書を手に取ることをおススメしたい。ルネサンスという時代の見え方が変わってくることウケアイだ。