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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2205冊目】丸山正樹『漂う子』

 

漂う子

漂う子

 

 

「血はもうとっくに入れ替わった。
 今の俺は、細胞から全部俺のもんだ」(p.202)

 


前作『デフ・ヴォイス』でろう社会という「見えない社会」を描いた著者が今回テーマとしたのは「居所不明児童」。文字通り、居場所がわからない子どものことだ。その数、把握できているだけでなんと1,500人近く。

主人公の直はフリーカメラマン。恋人で教師の祥子を手伝う形で、行方の知れなくなってしまった教え子を探しに名古屋に行く。そこで目にした、遺棄や虐待のすさまじさ、そこを飛び出した子どもたちを待っている過酷な現実……。

結末を言ってしまうとネタバレになってしまうのでここまでにしておくが、実はこの物語、「子どもはほしくない」「父親になる自信がない」と言う直自身にとっての、ある種のイニシエーションとなっている。その、直がつかみとった確信と覚悟がどのようなものかは、本書をお読みいただくしかない。

子が親となり、親が子を産む。この連鎖の中で、人間は成り立っている。親子のしがらみが虐待を作り出し、子が親となることへの不安を生み出す。だが一方では、親からもらった細胞など、せいぜい数年でまるごと入れ替わってしまうのだ。冒頭に掲げたのは、そんな実感を叫んだ元被虐待児の「シバリ」の言葉。そうなのだ。要は自分が、自分自身をどこまで信じてやれるかということなのである。