読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2195冊目】仲野徹『エピジェネティクス』

 

エピジェネティクス――新しい生命像をえがく (岩波新書)
 

 

「遺伝情報は、狭い意味では、ゲノムの塩基配列に書き込まれている。そして、学問分野としてのエピジェネティクスが注目するのは、そこにさらに上書きされた情報なのである」(p.22)

 



これを読んで、みなさんはピンとくるだろうか。それとも、なんじゃこりゃ、という感じ?

後者の方には、本書の「終章」で挙げられている喩えのほうがピンとくるだろうか。ゲノムを一冊の本だとする。遺伝情報はそこに書かれているテキストだ。だがそこには、「ここを読みなさい」とか「ここは読み飛ばしてください」と書かれた付箋が貼ってあったり、二重線で文字が消されていたりするとしよう。こうした「付箋」や「二重線」のような働きをいわば総称しているのが、エピジェネティクスなのである。

たとえばヒストン修飾という働きは、特定の遺伝情報を活性化したり、抑制したりする。あるいはDNAメチル化という働きは、塩基配列の中のシトシンをメチル化することで、遺伝情報を読めなくしてしまうのだ。

ポイントは、もともとの遺伝情報そのものが変わっているワケではない、というところ。本の喩えで言えば、書かれている文字は変わらないのだ。ところがそこにいろんな強調やら消除やらの「書き込み」「上書き」があることで、実際の「読まれ方」は大きく変わってくる。エピジェネティクスとは、こうした「促進」と「抑制」に関わる分野なのである。

正直、本書に書かれていることをすべてちゃんと理解しようとすると、けっこう大変だと思う。だがそれでも「そもそもエピジェネティクスとは何なのか」というコアの部分は、しっかりと伝わってくる。生命の「可変性」を遺伝情報の側から見ることのできる好著である。