自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2175冊目】橋爪大三郎『面白くて眠れなくなる社会学』

 

面白くて眠れなくなる社会学

面白くて眠れなくなる社会学

 

 
社会学とは何か。「社会の法則」をあきらかにする学問である。

社会の法則は、自然法則ほど明確に定まっているものではない。だが、社会がどういう仕組みに基づいて動いているのかを知ることは、きわめて実用的だ。特に、本書がターゲットにしているらしい中学生から高校生にとっては。

世の中の仕組みを知らずに世の中に出ていくことほど、恐ろしいことはない。だが、社会の法則を学校で教えてくれることは、ほとんどない。せいぜい政治や経済、法律といった「縦割り化」された学問体系の中で、そのひとつの側面を学ぶに過ぎない。だから例えば、学生たちは「仕事」とは何なのかをよく知らないまま仕事に就き、「結婚」とはどういうものかを知らないまま結婚し、「家族」とはどういうものかを知らないまま家族をつくるのだ。

本書はそんな(主に)中高生に向けた「社会入門」のための一冊だ。正直、それほど意外なことが書かれているワケではない。むしろ、非常に生真面目に、かつまっとうに、社会とはどういうものかについて書かれている。

ただし、1カ所だけ、目から大きくウロコが落ちたくだりがある。「正義とは、正しさが外からやってきた、という感覚です」というフレーズだ。う~ん、これは、思いつかなかった。確かに言われてみれば、そうなのだ。だからこそ、「正義」とは時に厄介な存在になるのである。