自治体職員の読書ノート

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【2174冊目】東山彰良『流』

 

流

 

 
とてつもない小説。とんでもない傑作。

かつて虐殺行為を働いた祖父をもつ主人公の若き日々。悪友と遊び歩き、恋に身を焦がし、兵役に就き、そして殺害された祖父をめぐり、自らのルーツを辿る。

台湾を舞台に、ユーモラスでエキサイティングなエピソードを重ねていく前半と、日本、そして中国に至る怒涛の後半。戦争と中国の分断を背景に、エネルギッシュな若き血が疾走する。雰囲気として似ているのは、民族の血と日々の生活を重ねた金城一紀、圧倒的なスケール感では莫言あたりだろうか。だがその濃密さと、歴史と現在を串刺しにする物語の厚みは、ちょっと他に類を見ない。

裏に流れているのは「過去の罪」と「赦し」をめぐる苦悩であろう。読んでいてどこか、日本の台湾支配や日中戦争をめぐる「罪と罰」が重なって見えた。日本にあたるのは、虐殺を働いた祖父か、その祖父を殺害した意外な人物か。間違いなく21世紀を代表する小説のひとつになるであろう、圧倒的な作品であった。