自治体職員の読書ノート

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【2141冊目】綾屋紗月・熊谷晋一郎『発達障害当事者研究』

 

発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい (シリーズ ケアをひらく)

発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい (シリーズ ケアをひらく)

 

 
著者として熊谷晋一郎の名前もあるが、本書のほとんどは綾屋紗月さんによる「自分語り」。自閉症アスペルガー発達障害の「内側から見た」体験には、ひたすら驚かされてばかりだった。

のっけからびっくりしたのは、「おなかがすいた」という感覚が「わかりにくい」と書かれているくだり。ええ? そんなことあるの? と思ったが、読んでみて納得。「頭が重い」「肩が重い」「ボーっとする」「胸がわさわさする」「胃のあたりがへこむ」等々の身体感覚はあるのだが、それを「空腹」と関係あるものとないものに分けた上で「おなかがすいた」という、いわば「意味づけ」をすることが難しいようなのだ。

こうしたことは、身体内部の感覚のみならず、外部の刺激に対しても生じるという。私たちの多くは、外部や内部からの膨大な刺激(情報)を意味づけ、関係づけながら日々を送っている。だが、実はそこにはさまざまな認知のプロセスが存在するのだ。わたしたちは単に、そのことに無自覚であるにすぎない。

さらに、著者はアウトプットにも苦労する。面白いのは、手話を学ぶことによって、表現することの負担がある程度軽くなったということだ。手話は聴覚に障害のある人のためのものだと思っていたが、「うまく話せない」人に対しても効果があるとは知らなかった。すでにやっているかもしれないが、吃音の人にも参考になりそうだ。

自分が普段当たり前と思っている「感じること」や「表現すること」に、なんとたくさんの過程が折りたたまれていることか。そして自分は、そのことになんと無自覚であったことか。本書を読んで気づかされるのは、そのことだ。発達障害を知るというより、彼らを通じて自分自身の「当事者研究」ができてしまう一冊。