【2139冊目】ヤマザキマリ『望遠ニッポン見聞録』
『テルマエ・ロマエ』『プリニウス』の漫画家、ヤマザキマリが綴るニッポン。
マークスなんちゃら女史のような「日本ダメダメ・西洋礼讃」エッセイでもなければ、最近やたらに多い「日本スゴインデスヨ」型エッセイでもない、絶妙の距離感が心地よい。それは、17歳で日本を出てイタリアで貧乏生活を送った(帰る旅費もなくなり、屋台でアクセサリーを売ってしのいでいたらしい)という経験によるものか、イタリア人の夫と暮らし、日々価値観をぶつけ合っているからか、それとも漫画家という商売ゆえの冷徹な観察眼なのか。
そんな彼女の視点から眺める日本人やイタリア人は、いろいろ違いはあるものの、どっちもどっちでいいじゃないか、と思えてくる。その中で、どうにもみっともなさを感じてしまうのは、自分の価値観を押し付けようとして異文化圏の人に対して「あんたたちはおかしい!」と言い募る人の存在だ。そういう人は、自分たちの価値観(家族がハグしないのはおかしい、とか)が絶対だと確信しているのだろう。
だが、おそらく「国際化」がどんどん進んでいく中で、最初に淘汰されるのはこういう連中なのではなかろうか。他国の文化や慣習を楽しむどころか、平気で否定するような人は、頼むからパスポートなど取らずに、自国の中で自民族とだけ付き合って生涯を終えてほしいものである。