自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【2089冊目】吉増剛造『怪物君』

 

怪物君

怪物君

 

 


異形の作品。日本語の極北。

一ページとして引用さえできない、とんでもないルビ、注釈、送りがな。万葉仮名を思わせる漢字の「当て字」に、フランス語、ハングル、さらには手書きの文字?までが入り乱れる。一行の詩に対する膨大な脚注。畳みこまれている、異様なペインティング。

読むことさえ成り立たない本だが、それでも懸命に文字を追っていくうちに、そこに残響している「音」の多彩さに気づかされる。それは古代から続く呪術的な音の連なりであり(折口信夫死者の書』の冒頭を思わせる)、東日本大震災での津波の残影であり、前衛のさらに「先」からの未来の響きである。

文字通りの「怪物」的な一冊。言葉の彼岸にコトバをもってたどり着いた本について、語る言葉など、持つわけがない。読め。そして、打ちのめされよ!