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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2044冊目】折口信夫・近藤ようこ『死者の書』

 

死者の書(上) (ビームコミックス)
 

 

 

 

折口の『死者の書』は、何度読んでもなかなか入っていけなかった。

そこに描かれている古代の思念、古代の世界観が、私にはあまりにも遠すぎた。それこそが日本人の思念の原型なのであろうけれど、それを感じ取るには、私はあまりにも現代の人間でありすぎるのかもしれない。

本書は『死者の書』の漫画化である。あの抽象度の高い「小説」を漫画にするという試みに驚いたが、読んでみてさらに驚いた。私がどうしても感じ取れなかった古代の世界観が、ここには見事に投射されている。決して凝った絵柄ではないが、服装や建物はもちろん、山や森のような風景に至るまで、すべてが古代日本の気配を備えている。時代考証のことはよくわからないが、おそらく相当厳密に調べ上げているのであろう。

故事を語り伝える「物語り」、女人禁制を犯した郎女の「物忌み」なども興味深い。確か折口民俗学では、「モノ」とは「物」であって「霊」でもあったはずである。物が単なる「物」ではなく、そこに「霊」が偏在している古代観念のありようが、ここから浮かび上がってくるではないか。「当麻曼荼羅」に至るラストも見事。著者はこの作品を、原著の「鑑賞の手引き」にしたかったと書いているが、確かに本書のヴィジュアル・イメージを手掛かりに、あらためて折口信夫の「原作」を読み直してみたくなった。

 

死者の書・身毒丸 (中公文庫)

死者の書・身毒丸 (中公文庫)