自治体職員の読書ノート

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【2039冊目】杉本貴代栄・須藤八千代・岡田朋子編著『ソーシャルワーカーの仕事と生活』

 

ソーシャルワーカーの仕事と生活―福祉の現場で働くということ

ソーシャルワーカーの仕事と生活―福祉の現場で働くということ

 

 
福祉事務所や児童相談所、学校に病院、母子生活支援施設に高齢者福祉施設と、ソーシャルワーカーの働く場は多様である。本書はそんな「現場」で働くワーカーたちの生の声を集めた一冊。タイトルで「仕事と生活」と謳うわりに「生活」の部分はあまり出てこないが、「仕事」のほうは多種多様でたいへんおもしろい。

ソーシャルワーカーにも理論や技術はある。だが、そんなものが到底通用しない現場の矛盾を丸呑みするところから、ソーシャルワーカーの仕事は始まる。常に現場に寄り添い、現場から発想する。それがソーシャルワーカーの原点であり、強味であり、醍醐味でもあるのだろう。

そのことをD・ショーンは「ぬかるんだ低地」と呼んだ。ソーシャルワーカーとは、「理論や技術では解決できないほど混乱した「ぬかるんだ低地」である実践の現場」を選んだ人々なのだ。もっとも、だからといって単なる直観や常識がそのまま通用するほど甘い世界では、もちろんない。やはりそこには専門性というものがあり、なんだかんだいっても、理論も技術もあるのである。

現場というものの圧倒的な厳しさと面白さが、本書には詰まっている。というか、これを「面白い」と思えるかどうかが、ソーシャルワーカーとしての適性を試す最初の分水嶺なのかもしれない。そして、向いている人にとっては、ソーシャルワーカーはたまらなく面白い仕事であるらしい。「自分の好きなことを仕事にできるなんて、ワーカーってプロ野球選手と同じだね」というセリフが本書の中にでてくるが、少なくとも私が本書を読んだ限りでいえば、ソーシャルワーカープロ野球選手より面白い。現場とはどういうものか知りたい人(もっとも、本当は自分で飛び込まないと現場はわからない)、ワーカーとしての適性の一端を知りたい人は、本書をのぞいてみるとよい。