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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2037冊目】白洲正子・河合隼雄『縁は異なもの』

 

縁は異なもの (知恵の森文庫)

縁は異なもの (知恵の森文庫)

 

 



白洲正子河合隼雄。なんだか意外な組み合わせだが、「縁結び」は鎌倉時代の僧、明恵であるらしい。河合が明恵の「夢記」をもとに本を書くことになり、すでに出ている明恵の本をいろいろ読んだ。中で「この人は明恵上人のことを完全にわかっている」と驚嘆させられたのが、白洲正子の『明恵上人』だったという。

その時の評価がおもしろい。白洲の文章には「男性的な切れ味」があるというのである。折り目正しく、はっきりと筋が通り、そして美しい。河合は白洲のことを「サムライ」であるという。「ぼやぼやしていると一刀のもとに切り棄てる気合に満ちている」からだ。今そんなサムライを感じさせる男はいなくなったが、『いまなぜ青山二郎なのか』に出てくる男性はサムライが多い、と話が続く。ほかにも青山二郎の話がこの本にはやたらに出てきて、無性に気になった。これは読まねばなるまい。

本書はそんなわけで、いささか異色の対談めいているのだが、お二人の呼吸がぴったり合っているので読んでいて気持ちがいい。河合という「聞き手の名人」の押し引き自在のワザによって「サムライ」白洲の生の言葉が次々に引き出されていくさまは圧巻だ。

特に面白いのが、能をテーマにした対談と、最後の「天下国家を論じるよりも」という対談だった。特に後者は、もう怖いものなしの二人が肩の力を抜いてゆるゆると語り合っているだけのように見えるのだが、時折きらりとひらめく言葉が素晴らしい。まさに達人同士の果し合いのような対談である。中でも印象に残った言葉は、「本物は探すのではなく、向こうからやってくる」というくだりであった。