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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2035冊目】J・P・ホーガン『星を継ぐもの』

謎・恐怖・幻想

 

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 
何をいまさら、と言われそうな定番中の定番、「SFオールタイムベスト」常連の一冊だ。実はこのたび、初めて読んだ。

月の裏側で発見された宇宙服の中の死体。それが「人類そのもの」であって、同時に「5万年前」のものであるとわかったところから、世紀の謎解きが始まる。そう、本書はサイエンス・フィクションの名作であると同時に、実はミステリー小説なのである。

少しずつ明かされる秘密が、次々に新たな謎を呼んでいく。その「伏せ方」と「開け方」の絶妙な手際は、まさに一級のミステリー。ラストの「謎解き」もすばらしいが、それをさらにひっくり返すのが、主人公のハントではなく、前半ではすっかり嫌われ者だったダンチェッカーであるというのが洒落ている。本書はホーガンのデビュー作だというが、その小説づくりのセンスには唸るしかない。

描写にはさすがに時代を感じるが、想像力とそれを支える論理力はそれを超えるものがある。意味深な(実はかなり巧妙な)プロローグも、痛烈な皮肉まじりのエピローグも、なんとも味がある。そもそも「星を継ぐもの」というタイトル自体、ある意味あからさまなネタバレなのだが、でもこれだけでは謎が解けないようになっている。


いまさらほめるのもなんだかな、という気もするが、でもやはりこれはよくできた小説だ。SFファンのみならず、ミステリーファンにも勧めたい。