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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【2027冊目】藤村正之編著『福祉・医療における排除の多層性』

 

福祉・医療における排除の多層性 (差別と排除の〔いま〕4) (差別と排除の「いま」)

福祉・医療における排除の多層性 (差別と排除の〔いま〕4) (差別と排除の「いま」)

 

 「差別と排除の〔いま〕」というシリーズの第4巻。

福祉と差別の関係について考えたくて手に取った一冊。福祉そのものの本質に関わる部分が差別や排除とどう結びつくか、ということに関心があったのだが、本書はどちらかというと、制度も含めた社会からの排除がメインで、そこに福祉がどうかかわっているか、という点にウェイトが置かれていたような印象だった。

生活保護についてはさまざまな「排除」の事例の中で、制度運営者によるものとして、ケースワーカーによる心無い対応がたくさん載っていて、関係者としては胸が痛むものがあった。適正な生活保護行政を運営することは大事だが、それと相手を見下したようなセリフを吐くことは別次元の話である。どんな状況・相手であっても、その人に対して一人の人間としてのリスペクトを払うことは大前提。福祉行政の一端を担う人間として、心したい。

多重債務や健康格差などが取り上げられているのは類書の中でも珍しい。印象的だったのは、ハンセン病療養所の中に設置された「プレス工場」の話。強制的に療養所に入れられた職人が、所内で生業に携わることができたという事例なのだが、その人の人生にとっては良いことだったと思えると同時に、それで果たしてよかったのか、との思いもぬぐえなかった。火災をきっかけに一方的に閉鎖されてしまったことに象徴されるように、それはあくまで療養所側による「恩恵」であって、社会の中で職人として生きるという「本来の姿」とはかけ離れたものであったからだ。

このことは、障害者や高齢者の入所施設で行われている「作業」や「活動」にも言えるように思う。確かに、実際に入所している人々の生活を充実させるという意味はあるのだろうが、これって一方では、本来であれば社会の中で包摂すべき人々を隔離して、社会生活の疑似的な代替手段を与えているにすぎないのではないか、と感じてしまうのだ。こうした人々を社会の中に組み入れていくにあたり、社会の側でなすべきことは何なのか、考えていきたいものである。