自治体職員の読書ノート

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【2005冊目】増田寛也編著『地方消滅』

 

 
2010年から15年までの人口移動の状況が「そのまま」で推移した場合(つまり毎年6~8万人が大都市圏に流入した場合)、2040年までに896の自治体が「消滅可能性都市」となる。有名な「増田リポート」である。

この推計結果がもたらしたインパクトは大きかった。896といえば日本の自治体のおよそ5割である。しかもそのうち523自治体は「消滅可能性が高い」とされている。過疎などとなまぬるいことを言っている場合ではない。これだけの自治体が消えてなくなるということは、日本そのものの存続の問題である。

なんでこんなことになってしまうのか。理由は2つ。一つは少子化による人口の自然減。もうひとつは、若者層の都市部への人口流出という「社会減」だ。特にこの「社会減」の影響が大きい。

若者が向かう先は東京などの大都市だ。しかも、東京は日本一の低出産率である。東京に吸い寄せられた若者たちは、結婚したくてもできず、子どもを産みたくても育てる環境が不足しているため、結果的に「産みたくても産めない」状況に押しやられる。大都市に人口が集中するほど人口の自然減にも拍車がかかり、都市は地方の人口を吸い込むだけ吸い込んでそのまま消滅させる「人口のブラックホール」と化す。こうした社会を、著者は「極点社会」と呼んでいる。

では、どうすればよいか。本書ではさまざまなプランが提案されているが、なるほどと思ったのは、地方中核都市の段階で「ブロック」をかけるという発想だ。もちろん、本来であれば、山間部の集落からの人口流出を食いとめる手立てがあれば一番良い。だが、すべての小規模集落に何らかの手を打つのは、さすがにコストがかかりすぎる。だから、まずは地方の広域ブロックごとに人口流出を食い止める「ダム」をつくるのである。

たいへん現実的な発想である。しかも、これはけっこう効果的でもあるように思う。地方中核都市にある程度の雇用や産業が生まれ、魅力をもつようになれば、今度はそこを拠点とした周辺地域とのネットワークが生まれる。仕事を地方中核都市で得て、周辺市町村から通勤するようになれば、周辺部もベッドタウンとして活力を取り戻す。だが、問題はどのようにしてそうした試みに取り組むか、である。これまでの国土開発の歴史は、特に高度成長期以降は、この手の「拠点都市」への投資とその失敗の繰り返しであった。その轍を踏まないようにしなければならない。

ヒントになりそうな地方の取り組みもいろいろ紹介されているが、重要なのは、月並みではあるが、それぞれの地方が独自に創意工夫を凝らすことだろう。特に地方中核都市になりうるような政令指定都市や県庁所在地レベルの都市で、相当な政策立案力の強化が必要となる。出産・育児支援も、こうした拠点となる自治体で集中的に支援を手厚くすることが考えられるだろう。

そして、こうした取り組みは大都市圏を救うことにもつながる。実際に住んでいる立場として言わせていただくと、待機児童や特養待機者の問題をみてもわかるように、居住環境としてはすでに東京などは劣悪そのものである。にもかかわらず多くの人々がやってくるのは、なんといっても雇用が集中しているからであろう。だから最優先で取り組まなければならないのは、雇用の場の分散だ。だがこれがなかなか進んでいない。国の官庁の一部を地方に移転させる話が出ただけで、関係団体も巻き込んでの大反対が起きるありさまである。これほどの結果が突きつけられても「変われない」この国とはいったい何なのだろうか。

ちなみに、これは本書を読んで初めて知ったのだが、世界的にみると、今は女性の就業率が高いほど、出生率も高いのだそうだ。むしろ「男が外で働き、女が家庭を守る」性的役割分担の強い国のほうが出生率が低い。以前はよく「出生率が下がったのは、女性が働きに出るようになったからだ」と言う人がいたが、そうではないということになる。重要なのはやはり、政府や自治体による子育てへのサポート。結局は「働きたい人が働けて、子どもを産みたい人が産める社会」がすべての基本なのである。