【1998冊目】鳥飼否宇『絶望的 寄生クラブ』
この人の小説を読んだのは、これが初めて。う~ん。こりゃ、バカミスといえばバカミスだが、ずいぶん変わったバカミスだ。
なにしろ構造が入れ子状になっている。主人公の大学准教授「増田米尊」(何と読むでしょう?)を中心とした層があって、その増田が書いた学会発表用の資料がなぜか置き換わってしまった珍妙な小説の層がある。さらに一部では、その中にさらにもうひとつ層があって、それらが微妙に関連していたりもするのである。
ミステリー自体も層構造だ。作中作は「読者への挑戦」までついていてミステリーのつもりらしいし、そもそもなんでこんな「置き換え」が起きたのかが謎である。さらにこの小説には思いがけない仕掛けがあって、そのあたりはとにかく読んでいただくしかないのだけど、メタ小説、メタメタ小説であって、しかもその仕掛けが見事にバカミスしているのだ。いやあ、よくぞこんな趣向を考えついたものである。
面白くて、アホらしくて、ちょっとエッチで、かなりチャーミングな一冊。それにしても、ヘンな(これは褒め言葉)作家が出てきたものである……と思ったら、デビューは2001年というからわりとキャリアがある方なんですね。バカミスだけではなくわりと本格的な作品もあるようなので、そのうち読んでみたい。