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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1992冊目】浅田次郎『一路』

 

一路(上) (中公文庫)

一路(上) (中公文庫)

 

 

 

一路(下) (中公文庫)

一路(下) (中公文庫)

 

 

時は江戸時代末期。父の急死により江戸から呼び戻された小野寺一路は、わずか19歳にして、父に代わって、交代寄合蒔坂家の御供頭として参勤交代の仕切りを任されることになる。頼りになるのは、なんと200年前に記された家伝の「行軍録」のみ……。

いやはや、面白かった。広い意味での「旅モノ」なのだが、それが参勤交代という大所帯の移動であって、しかも越えていくのは冬の中山道というとんでもなくハードな道のり、さらにそこにキナ臭いお家騒動までが重なって、岐阜から江戸までの長い道中を少しも退屈させずに読ませ切る、浅田次郎の語りの巧さはさすがの一言。ストーリーも明快で、随所に「泣き」と「笑い」を仕込み、講談さながらのリズムで最後まで引っ張っていく。

主人公は小野寺一路なのだが、圧倒的にキャラが立っているのは、むしろ殿様の蒔坂左京大夫。「うつけ」「バカ殿」を装っているが実は名君、という設定はベタではあるが、その見せ方がうまい。単に頭が切れるというだけではなく人間味があって、しかも自分の立ち位置を考えて言葉を選ぶ、そのギリギリのせめぎあいがおもしろい。「悪役」の蒔坂将監の存在感も相当なもので、やっぱり悪役はこうでなくちゃいけない。