自治体職員の読書ノート

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【1985冊目】最相葉月『ナグネ』

 

 

身近なはずなのに、見ていなかったこと、知らなかったことがたくさん書かれている。日本で暮らす留学生が、いかにハードな生活を強いられているか。中国の反日感情が、どれほど根深く、そのことに日本人がいかに鈍感か。その中国で、今もキリスト教の地下教会があり、多くの人が当局の迫害や弾圧を怖れつつ信仰の日々を送っているか。だいたい、中国に住みながら中国でも韓国でもマイノリティの「中国朝鮮族」の存在すら、私はこの本を読むまで知らなかった。

本書は、そんな中国朝鮮族の女性と著者がたまたま知り合い、関わりをもつところから始まる。その女性、具恩恵を通して見る日本、中国、韓国の姿は、びっくりすることの連続だ。私たちのすぐ隣に、こんな思いを抱き、こんな日々を送っている人がいること自体、なんだか不思議な感じがする。それはまさに「内なる異国」そのものである。

「ナグネ」とは「旅人」の意。ひとところにとどまるのではなく、常に移動する彼らは、日本、中国、韓国をつなぐネットワーカーでもある。今のような時代だからこそ、こうした「ナグネ」こそ、日本と中国、韓国をつなぐ存在として必要なのだと、本書を読んでつくづく感じた。