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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1983冊目】須賀敦子『塩一トンの読書』

 

塩一トンの読書 (河出文庫)

塩一トンの読書 (河出文庫)

 

 

「ひとりの人を理解するには、すくなくも、一トンの塩をいっしょに舐めなければだめなのよ」

著者は新婚の頃、姑にこんなことを言われたそうだ。「一トンの塩」というのが分かるようで分からないが、理屈抜きにズシンと伝わってくるものがある。

これ自体はあくまで人間関係、特に夫婦関係の話なのだが、そこから本の読み方に思いをめぐらせるところが須賀敦子らしい。特に古典との関係だ。一人の人間をすみずみまで知るのと同じように、古典と呼ばれるような本を、すみからすみまで理解し尽くすためには、やはり「塩一トン」ぶんの付き合いをしなければならないのだ。本と付き合うとは、つまりはそういうことなのだ。

本書はそうした、著者と本との交錯の軌跡を辿るような一冊だ。書評集といえばそうなのだが、そこには単なる「評」ではなく、本と丹念に向き合う著者自身の姿が透けて見える。どんな本でも、読み飛ばし、読み捨てるような私自身の本の読み方とは正反対。なんだか自分がひどくみっともないことをしているような気になった。