自治体職員の読書ノート

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【1953冊目】NHKスペシャル取材班『女と男』

 

女と男  ?最新科学が解き明かす「性」の謎? (角川文庫)

女と男 ?最新科学が解き明かす「性」の謎? (角川文庫)

 

 

男、ヤバイね。相当ヤバイ。読みながら、ずっとそう感じていた。

女と男の違いは、どこから来るか。本書ではそのルーツを、数百年前の狩猟採取時代に求める。男は狩りに出かけ、女は木の実を採取し、子どもを育てる。そうした役割分担に基づく進化の積み重ねが、今の女と男の違いに結実している。

だが本書では、だから女と男は違ってていいんだ……という結論には、ならない。男女のコミュニケーションを研究するゴットマン博士は、「男が変わらなければならない」と断言するのである。なぜかといえば、人生の目的は今や(数百年前とは違って)「生き残り、子孫を残す」ことから「生きがい」や「自己実現」に変化しているから。そして、そうした変化には、総じて女性のほうがうまく適応できているからである。

人生の目的が「生きがい」「自己実現」というのは、なんだかいかにも浅薄なようにも思えるが、だがこないだ読んだ『下流老人』などをみても、コミュニケーション能力が人生の質を大きく左右する時代は、すでに到来しているといえる。そこで大事になるのは、女性が得意とする「自分の感情に対してオープンになり、他人の感情を理解する」能力なのだ。

もちろん、変われと言われてすぐ変われるなら男性も苦労はないのだが、実は問題はもっと根深い。なんと世界的なレベルで、男性の精子が劣化しており、さらには男性のみがもつY染色体もそのうち消滅するだろうと予想されているらしいのだ。

まず精子の話から。衝撃的だったのは、デンマークでの研究結果。なんと、精子の数が少なく、不妊基準に該当する男性が全体の20%に上ったという。他の国もだいたい似たりよったりらしい。しかもその割合は、原因は不明ながら、近年急激に増えている。調査に参加したヤーゲンセン博士は「このままいくと、自然な受精は難しくなっていく」と指摘しているという。

そうなると、人口を維持するために必要となるのが、人工授精などの生殖補助技術だ。課題は山ほどあるが、近い将来、人間の生殖は人口的手段に頼ることが当たり前になり、自然分娩はレアケースになるかもしれない。その変化についていけない国は、出産数の減による人口減に、これまで以上に見舞われることになるだろう(日本はたぶんこっちのほうだろう)。

それに比べると息の長い話だが、根本的な「男性の危機」となるのが、男性のみがもつY染色体が少しずつ「短く」なっているという研究結果だ。遺伝子レベルにおける男性と女性の違いは、一言でいえば23対目の染色体、いわゆる性染色体の組合せに尽きる。XXの組み合わせが女性、XYの組み合わせが男性である。

このY染色体、男性しか保有しないのであるから、必ず父から子へと遺伝する。他の遺伝子のように混ざり合うことがないのである。だが、このことが実は、染色体が短くなる原因であるという。というのも、コピーミスが起きた時、他の遺伝子のように修復を行うことができず、そのまま遺伝子が壊れてしまうからである。

この「コピーミスの修復能力欠如」が、いわば人類出現の時点から、Y染色体には宿命づけられていたのだ。そうなると、そのうちY染色体は消滅し、つまりは男性という「性」自体が消えてなくなることにもなりかねない。

タイトルで分かるように、本書はNHKスペシャルで以前放送したものの書籍化である。女と男で違う「道案内」のやり方、男として生まれたのに女として育てられた人物の悲劇、そして恋愛や愛情のメカニズムなど、とにかく興味を惹かれるトピックが満載の一冊だ(ちなみに本書によれば「恋愛」「性欲」「愛情」はそれぞれ別モノであるとのこと)。

だが、それもそのはず。女と男をめぐる話題は、わたしたちの誰にとっても他人事ではないのだから。ちなみに、最後に豆知識。本書によれば「恋の賞味期限」はおおむね12カ月から18カ月である一方、離婚がもっとも多いのは結婚して4年目だそうである。みなさん、気をつけましょう(何に?)。