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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1918冊目】絲山秋子『ばかもの』

せつなさ・いとおしさ・なつかしさ

 

ばかもの (新潮文庫)

ばかもの (新潮文庫)

 

  

恋愛小説との触れ込みだが、私は死と再生のドラマとして読んだ。

大学生のヒデが主人公。気が強く奔放な額子に夢中になるが、額子は結婚してヒデのもとを去ってしまう。社会人になったヒデは、アルコール依存症になり、仕事も恋人も失ってしまう。徐々に「どん底」に至る描写が、怖くなるほど真に迫っている。

入院生活を終えて、ヒデは額子のもとを訪れる。そこで待っているのが、とんでもなく衝撃的な再会だ。ヒデが「死んで」いた間、額子もまた別の意味で「死と再生」をくぐり抜けていたのだ。底の底まで堕ちた者同士の、それなのにどこかぎこちなく、初々しい関係に、なんだか読んでいて目が痛くなる。

するする読める文章なのに、時々ぎょっとする描写があって立ちどまる。その瞬間、世界が違う顔を見せる(特に「想像上の人物」はおもしろい)。この人の描く世界は、どこかで別の世界に通じている。そのスキマを見つけるように読んでいくのが、なんとも楽しい一冊だ。