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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1901冊目】丸茂ジュン『セックスと嘘とアダルトビデオ』

人類・人間・人生

 

セックスと嘘とアダルトビデオ―村西とおるの七転八起人生
 

 

ローマ皇帝ハドリアヌスの次が「AV界の帝王」村西とおるの評伝というのは、なんとも節操のない選書で恐縮だが、人生つながり、評伝つながりということで。いちおう、どっちも「帝王」だし。

ということで、本書はかの「AV界の帝王」村西とおるの波乱万丈の半生を綴った一冊。しかも、村西をインタビューし、本書にまとめたのは、官能小説家の丸茂ジュンという、なんとも異色の一冊なのだ。

福島県いわき市で生まれ、中学1年で初体験、相手は小6の女の子というからびっくりだが、村西のまわりもそんなものだったようだ。その後も、著者は村西の「性体験」にフォーカスしつつ、後の村西とおるがどのように生まれたか、そのプロセスをあぶり出していく。

この手のセックス体験は、たいていの「評伝」ではそれとなく避けられてしまうのだろうが、こと「村西とおる」を語るには、ここを外すワケにはいかない。その意味で、丸茂ジュンという書き手はまさにベストマッチだったといえるだろう。著者は性描写から逃げることなく、むしろ官能小説ばりのリアルさで描き切っており、その迫力が「村西とおる」という破格の人物の迫力につながっている。

社会に出た後は、営業マンを経てゲーム機販売のヒット、さらには「ビニ本」で大当たりするも「猥褻図画販売」での逮捕、出所後のアダルトビデオへの転身と波風の絶えない日々を送る村西だが、やはり読んでいておもしろいのは、アダルトビデオという前人未到の世界に切り込んでから「帝王」と呼ばれるまでの軌跡である。

特に、さんざん頭を悩ませてつくった作品が全然売れず、偶発的に生れた「顔面シャワー」や、発売を休止しようかと思っていた「SMぽいの好き」が大ヒットしたというのが興味深い。売ろうと計算してつくったものがたいして売れず、計算外の「意外性」こそが受けるのは、どんな業界でも変わらないようだ。ちなみに「SMぽいの好き」は、あの黒木香との出会いから、これまた偶発的(というか、突発的)に生まれたというが、そこには、それまで「モノ扱い」されていた女性の主体的な性を前面に出すという転換もあった。女性に性欲があること自体、それまではほとんどタブーだったのだ。

インタビュアーとしての丸茂ジュンの手並みも見事。聞きにくいこともあえて正面から切り込み、村西の答えを引き出すことで、見事にこの稀有の人間の半生を描き出してみせている。まあ、ここに書けないようなこともいろいろあったのだろうが、村西自身の語りから組み立てた評伝としては、おそらく最高の出来なのではないだろうか。いずれにせよ、日本のAV業界はここから始まったのだ……そして、ひょっとするとこの業界は、まだまだ村西とおるという帝王の掌の上を超えることができていないのかもしれない。