自治体職員の読書ノート

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【1890冊目】津原泰水『ブラバン』

 

ブラバン (新潮文庫)

ブラバン (新潮文庫)

 

 

小説家は、誰のために書くのだろうか。

読者のため、だろうか。だが、小説家にとって、読者とはいったい「誰」のことだろう。

本書を読んで感じたのは、この小説は、著者が徹頭徹尾「自分のため」に書いた物語でなのではないか、ということだった。多くの読者に読んでほしいとか、今までの自分のファンの期待に応えたいとか、そういう配慮が、良い意味で、本書にはあまり感じられない。むしろ、自分は自分のために書くべき物語を書くのだという確信、世間に受け入れられなくても構わないという覚悟を、本書からは強く感じた。

そして、こういう本は、確かに一般ウケはしなくとも、一部の読み手には猛烈にハマるものなのだ。例えば、そう、本書を読んだときの私のような。実際、本書は私のノスタルジーのツボを押しっぱなしだった。若き日の思い出から、卒業後四半世紀を経た現在というシンクロぶりまで、気味が悪いほどの一致。この共鳴ぶりは、『船に乗れ!』以来のことだ。

だから、おそらく、本書には読書ノートは必要ないし、書きようがない。自分の十代と物語が重なった。それ以上、いったい何を書けるというのだろうか?