自治体職員の読書ノート

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【1885冊目】エウヘーニオ・ドールス『バロック論』

 

バロック論

バロック論

 

 

バロックは歴史的常数である。「アイオーン」である。ある時代特有のスタイルではなく、歴史を通じてたびたび出現する、より根源的な「カテゴリー」である。

古典主義が安定した「静」なら、バロックは不安定な「動」をはらむ。バロックとは矛盾である。バロック精神とは「自分が何をしたいのかわからない」(p.34)ことなのだ。「バロック精神は、腕をあげながら手をおろそうとする」のだ。

バロックは再臨する。アレクサンドリア学派はバロックである。反宗教革命運動も、世紀末芸術もバロックである。古典主義とバロック主義は様式の二大巨頭である。すべての精神、思想、芸術は、この2つのあいだを往還する。

古典主義の先駆者は古代である。ギリシア文明やローマ文明が、常にその模範となった。ではバロックは? それは文明以前である。野蛮の時代である。ルネサンスは古典を再生した。バロックは原始時代を再生する。

古典主義が正統なら、バロックは異教的である。だがそれでいて、バロックは神を称え、人間が神の法悦に浴するシーンを描いた。ベルニーニの傑作「聖女テレサの法悦」を見よ。

本書はバロック再評価のきっかけとなった一冊であり、同時にバロックの概念を途方もなく拡張した本でもある。古典があってバロックがあり、ロココがあってロマン主義があるのではない。バロックはたいていの場合、「常にそこにある」か「古典主義の影に隠れて時勢を待つ」かのいずれかなのだ。ちなみに現代のバロックは、主には、マンガやインターネットの世界に潜んでいる、のであるらしい。