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自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1873冊目】アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『三秒間の死角』

 

三秒間の死角 上 (角川文庫)

三秒間の死角 上 (角川文庫)

 

 

 

三秒間の死角 下 (角川文庫)

三秒間の死角 下 (角川文庫)

 

 

コードネームは「パウラ」。ピート・ホフマンの任務は、潜入捜査員として犯罪組織に潜り込むこと。潜入した組織の信任を得たパウラが任されたのは、なんと刑務所内に麻薬密売ネットワークをつくりあげることだった。

麻薬密売網を一網打尽にしたい捜査サイドの上層部もこれを後押しし、ピートを刑務所に収監するが、潜入捜査のことが露見しそうになると、一転して上層部はピートの切り捨てを決める。刑務所内で命を狙われることになったピートのとった、大胆で緻密な方法とは……

登場人物の造形、ストーリー展開の巧さ、そして思いがけない展開で読む者を捉えて離さない、刑務所モノのミステリの傑作だ。特に潜入捜査や刑務所の描写のリアリティはものすごい。それもそのはず、著者のヘルストレムは、刑事施設や更生施設の専門家なのだ。ちなみにもう一人の著者ルースルンドはジャーナリストで、刑務所のドキュメンタリー番組を制作中にヘルストレムと出会い意気投合したことがきっかけで、作家コンビを結成したのだという。刑務所はこの二人にとって「十八番」の舞台であったのだ。

とはいえ、それだけでこういう周到なミステリが書けるものではない。本書で特に見事だったのは、伏線のうまさ。特に、収監前のピートの行動は、ひとつひとつ注意深く読んでおくことをオススメする。後半からクライマックスに向けて、そのすべてが一気にほどけていくのは、ミステリ好きにはたまらない快感だ。

そして、ピートを追う刑事エーヴェルト・グレーシスが、本書のもうひとつの軸である(本書の奥行きは、ピートとエーヴェルトの二つの焦点を持っているところから生まれているともいえる)。とはいえ、前半のエーヴェルトの活躍ぶりは正直あまりぱっとしない。なんでこんな奴が主人公なのかと、最初は何度も首をひねった。

それが後半になると、俄然、エーヴェルトを中心に物語が動き出す。そして、なぜピートと並ぶ主人公にエーヴェルトが選ばれたかが、本書を読み終わるころには深く理解できる。ちなみに、実は本書はエーヴェルトの登場する5作目の小説であるというが、これまでの作品を読んでいれば、また違った読み方ができたのかもしれない。