自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1868冊目】J・G・バラード『結晶世界』

 

 

結晶世界 (創元SF文庫)

結晶世界 (創元SF文庫)

 

 

「先生、気の小さい乗客がたが気づいていないことは、あなたの病院の外の世界だって、ひとまわり大きな癩病院にすぎんということなんですよ」(p.15)

 

「わたしの名はサンダーズです。所属はフォート・イザベル癩病院」(p.23)

 

「むこうではなにがもちあがってるんだ。モント・ロイアルでは」(p.32)

 

「もう一年ほどになります。一年以上かもしれません。初めは、誰も気にしなかったんですが……」(p.34)

 

「外出するには、もう遅すぎるわ」(p.48)

 

「さっききみが言った光の鎧のことだが、あの死体は頭から足の先まで水晶でおおわれていなかったかい」(p.76)

 

「わたしには、ここで起こっていることと、あなたのご専門とは、とてもよく似かよっているように見えるんです。ある意味で、一方は片方の暗い一面にほかならないんです。というのは、つまり、癩病につきものの銀色の鱗癬のことを考えて言ったわけなんです」(p.84)

 

「少なくとも二つのほかの地域で同じ現象が起こっています。一つはアメリカのフロリダ、いま一つはソ連のプリペット湿地帯です」(p.86)

 

「過飽和溶液がみずからを放出して水晶体になるのとちょうど同じように、この時空連続体において物質が過飽和すると、この時空連続体に対応する宇宙内の母体にその物質が現われるのです」(p.110)

 

「あんたもわたしも、やがてあんなふうになってしまうんです。世界じゅうがああなってしまうんです。生きているのでもなく、死んでいるのでもないああいう状態に」(p.116)

 

「忘れないでくださいよ、先生、森の中を歩くときには一方向に進む、しかし、目は前と後ろの二方向を見張るんです」(p.150)

 

「わたしを元の―元のところへ連れて行ってくれ!」(p.158)

 

「どうもマックスは、森でなにが起こっているかを理解していないようなの。つまり、もっとも広い意味で、わたしたちの時間の観念や道徳の観念がこの森でどういう変化を受けつつあるか、それを理解していないらしいんです」(p.170)

 

「エドワード、たったいま、あなたはどんな女と―交わったのか、知っているの」(p.196)

 

「この森の中でわたしどもはキリストの聖体の最終的な祭典を見ているのです。ここでは、すべてが姿を変え、光り輝き、空間と時間の最後の結婚で一つに結びあわされているのです」(p.222)

 

「いまでは、生と死のあいだの単純な区別はもうたいした意味をもっていないように思われるんだ」(p.239)

 

※たまにはこんな「読書ノート」も良いでしょう。映画の予告編のように、会話の断片から全体を浮かび上がらせてみたいと思いました。見えない部分があることで、もしみなさんの想像が少しでもかき立てられれば、この試みは成功です。うまくいったら、おなぐさみ。