自治体職員の読書ノート

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【1742冊目】佐々木譲『制服捜査』

制服捜査 (新潮文庫)

制服捜査 (新潮文庫)

北海道小説8冊目。一部ネタバレがありますので、ご注意を。

札幌の敏腕刑事から、十勝の農村に「駐在」として赴任してきた川久保が主人公の連作短編集だ。人口わずか六千人の田舎町に起きる奇妙な事件に、刑事ではなくあくまで「駐在」として関わる川久保の前に、徐々に町の暗い秘密が明らかになっていく……

著者の小説は、実は初めて読んだ。北海道を舞台とした警察小説が多い、くらいの印象しかもっていなかったが、調べてみると時代小説や冒険小説もけっこう書いているらしい。事件をメインにしつつ、警察内部の微妙な綱引きや地域の連中との関わりを描いていくところは、ちょっと横山秀夫を思わせるが、あそこまで組織のドロドロに踏み込んではいない。むしろ、駐在という主人公のポジションもあって、「地域」と「警察官」との関わりが、かなり深いところまで描かれている。

「逸脱」「遺恨」「割れガラス」「感知器」「仮装祭」の5篇が収められているが、なんといってもギョッとするのはラストの「仮装祭」だ。関係なさそうに見えたそれまでの4つの短篇の裏側にあるものが、そこでずるりと本性をあらわす。伏線というほどでもないかすかな伏線が、ああ、そういうことだったのか、と妙な納得を生む。

物語自体はどれも、決して後味はよくない。「感知器」はそれほどでもないが、「逸脱」で行方不明になった少年は結局死体で見つかるし、「遺恨」のラストも決して救いのある終わり方ではない。

「割れガラス」にしても、一人の刑事の不用意な行動から前科者というだけで仕事を失い、町から追い出されるようにいなくなる大城や、それによって大城との関わりを断ち切られる少年の浩也は、なんともやるせない。「無能な刑事は、まわりの人間の人生をあっさりとぶち壊す」という川久保の言葉が重い。

そして「仮装祭」も、新たに誘拐された女の子は見つかるが、かつての事件の後味の悪さはずっと消えない。だがそれがおそらく、著者にとっての物語のリアリティであり、必要な「苦み」なのだと思う。その「苦み」があってこそ、刑事の職を離れて地方の駐在をやっている「制服」の川久保の、悲哀と渋みが活きてくるのだ。

正直、この人の警察小説をもっと読みたい、とまで思えるところまではいかなかったが、でも悪い小説ではない。文章もうまいし、物語を引っ張っていく手際もなかなかだ。今度はこの人の時代小説でも読んでみようかな。