自治体職員の読書ノート

自治体職員です。仕事の関係上、福祉系が多めです。読書は全方位がモットー。

【1731冊目】塩浜克也・遠藤雅之『自治体の法規担当になったら読む本』

自治体の法規担当になったら読む本

自治体の法規担当になったら読む本

コチラにもよくコメントを寄せてくださる、「自治体法務の備忘録」の管理人、kei-zuさんの「正体」が、本書の著者のお一人である塩浜氏だ。

そもそも考えてみれば、私が法務に関心をもつようになった大きなきっかけの一つがこの「備忘録」だった。すぐれた参考書や面白い本も、たくさん教えていただいた。いやいや、そもそもこの読書ノートだって、「備忘録」のアンテナ(リンク集みたいなもの。今ではプライベート設定になってしまったが)に載せていただいてからアクセス数が伸びだしたのだ。そういうわけで、実は私、佐倉市方面には足を向けては寝られないのである。

そんなワケで、直接お会いしたことはないのだが、なんだか知人(恩人)の著作を読んでいる気分で読み始めた。とはいえそれは「だからといって身びいきはしないぞ」と身構えての読書でもあったのだが、まったくそんなことを考慮する必要のなかったことは、読み始めてすぐにわかった。本当に贔屓なしで断言するのだが、とにかく実によくできた参考書なのである。

かゆいところに手が届く、という表現が、本書にはぴったりあてはまる。例規審査の手順や方法、議会対応から訴訟対応まで、扱われているテーマは幅広いのだが、通りいっぺんの説明に終始することなく、かならず実務担当者ならではの視点が織り込まれている。「洋々亭フォーラム」あたりでよく取り上げられそうな、見落としがちだったり勘違いしやすいポイントもきめ細かくフォローされている。

なるほど、と思ったのは「規定すべき内容に無理が生じていると、条文にも無理が生じていることが少なくありません」(p.212)というくだり。政策から条文への流れは一方通行ではないのである。むしろ条文を書くことで、政策そのものを見直すきっかけが生まれるというのは、言われてみれば思い当たるフシがある。

ちなみに条文以外にも、例えば住民向けの周知文(広報の原稿やホームページの案文など)などを作っていると、どうやっても複雑で分かりにくい文章になってしまうことがあるが、だいたいそういう時は、制度自体が無用に複雑すぎるなどの問題があることが多いのだ。

ちなみに私が本書でもっとも素晴らしいと思ったのは、細かい仕事の進め方よりも、基本的な心構えに関する部分。例規審査のやり方のみならず、積極的な情報提供や相談を受ける時の姿勢など、全体を通じて、とにかく原課(所管課)をサポートし、原課を支えるというスタンスが徹底しているのだ。著者(のお一人)は、赴任時に先輩からこう言われたというが、まったく同感。役所がいい仕事をするためには、管理部門こそこういう心構えが必要なのだ。

「内部管理部門である法規担当にとって、お客さんは原課なんだ」(p.224)