自治体職員の読書ノート

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【1712冊目】有川浩『図書館戦争』

図書館本5冊目。このへんで、ちょっと目線を変えてみる。

先日紹介した『図書館の発見』の著者、前川恒雄氏が改革を牽引した公共図書館のパイオニア、日野市立図書館が出てくると聞いて読んでみた。ちなみに忘れないうちに書いておくが、チラッと出てくる程度かと思ったら、かなり重要な役どころでこの図書館は登場する。

本書については、解説は必要だろうか。アニメや映画にもなった超有名小説シリーズで、メインシリーズだけで4冊、さらに外伝として「別冊」2冊が刊行されている。

なんとなく気になってはいたのだが、図書館を舞台に軍隊がドンパチやるという設定にあまり(というか全然)そそられるものがなかったというのが正直なところ。今回「図書館モノ」のまとめ読みをやらなければ、たぶんそのまま読まないままだっただろう。

で、内容は事前情報どおり「図書館で軍隊がドンパチ」なのだが、そこをなんとかゴックンと飲み下せれば、あとは一気にラストまで突っ走れる。アクションあり、ラブコメあり、しかも主人公の成長小説でもあり、会話のトーンはラノベであり、しかもそこに「検閲」と「表現の自由」というヘビー級のテーマを織り込むという、なんというか信じられないくらいの「てんこ盛り」小説なのだが、そのすべてがみごとにひとつの物語に溶けあっている。有川浩、巧すぎ。

主人公の笠原郁が面白い。自称「戦闘職種大女」で猪突猛進の熱血バカだが、すぐ涙を見せたり恋愛沙汰になるとあたふたする純情さももっている。この笠原のキャラが立っているから、指導教官の堂上、同期のエリート手塚、友人の柴崎といった主役級の脇役がどんどん動き、物語がぐんぐん動いていく。

文庫本巻末に載っている児玉清氏との対談で「物語の都合でキャラクターを動かさないように」と思って書いていたと著者自身が言っているが、まさに登場人物が勝手に動き回り、しゃべりまくっている躍動感がみなぎっている。

設定の、メディア良化法だの図書館を守る「図書隊」だのという一見荒唐無稽な設定も、そこからお話を引っ張ろうとしていないから、読んでいてあまり鼻につかないのだ。どんな設定でも登場キャラが活きればお話になるという、見本のような一冊である。

それにしてもこれはSF? ラノベ? ファンタジー? 無理にジャンル分けする必要もないとは思うが、あえて言えばこれは「寓話」だと私は感じた。ポップなイメージの奥にある、表現の自由をめぐる生臭い争いを、あえて銃器と制服という衣をかぶせて目立たせたのがこの小説なのだ。

問題はその裏にある、現実に今も、目に見えない形で行われている検閲と規制。「メディア良化法」は現実には存在しないが、同じような法律や条例がまったくないと言い切れるだろうか。そしてこの小説のように、図書館ははたして、そうした動きに対して文字通り「身体を張って」本を守る気概を持てているだろうか……