自治体職員の読書ノート

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【1565冊目】菅原洋平『朝昼夕3つのことを心がければOK! あなたの人生を変える睡眠の法則』

朝昼夕3つのことを心がければOK!  あなたの人生を変える睡眠の法則

朝昼夕3つのことを心がければOK! あなたの人生を変える睡眠の法則

お気軽ノウハウ系の「いかにも」なタイトル、「内側からコンコンとやる気が湧き上がる」「あなたの人生を変える」といった定番フレーズ、二色刷りで「大事なところはゴシック太字」「各章の終わりにまとめが箇条書き」と、見た目はビジネス書やノウハウ本にありがちなチープな大量生産品。

だが読んでみると、中身はけっこうな本格派だ。最新の研究成果をもとに、眠りにまつわる問題や誤解を丁寧に解きほぐし、非常にシンプルで実践性の高いメソッドに整理するお手並みはなかなかのもの。

最初に結論を書いてしまうと、そのメソッドとは「起床後4時間以内に5分間、光を見る」「起床から6時間後に5分間(から15分間程度)、目を閉じる」「起床から11時間後に5分間、姿勢を良くする」の3つである。

ポイントは「起床後」で実施する時間が測られていること。だから仕事柄朝がめっぽう早い人や、逆に昼頃起き出す人でもすぐ実践できる。「5分間」という時間区切りも、いかにもカンタンにできそうだ。しかも、こんなことでホントに効果があるの? という疑問に対しては、かなり詳しい説明があるので心配無用。だいたい、この程度であれば試してみたってソンはない。

睡眠について、意外なこともたくさん書かれていて面白い。たとえば私は、午後イチの会議がやたら眠いのは「ご飯を食べたから」だと思っていたのだが、実は人間の身体って、起床時間から8時間後と22時間後に眠気のピークが訪れるようになっているのだという。その証拠に、仮に昼食を抜いたとしても、やっぱり午後の会議は眠くなる。

その対策が、さっきの「起床から6時間後」なのだ。ここで目を閉じることで、たまりつつある睡眠物質を早めに減らすことができるのだという。よくいう「15分くらい昼寝をすると良い」というのも、同じことをやっている。

ただ「眠る」までいかなくても、目を閉じているだけでもアルファ波が出て、睡眠物質を減らすことができるらしい。ちなみにこれを著者は「睡眠負債を減らす」とも表現する。この「眠りの借金」をどう返済していくかが、著者の睡眠法のひとつのコツになっている。

右脳や左脳は知っていたが、脳の「前後」のバランスが大事、というのも初耳だ。前部の前頭葉は「思考」、後部の頭頂葉は「感覚」を司る。この両者が適度に刺激を受けることが重要なのだが、実際には現代の都市型生活では、どうしても前頭葉が刺激を多く受けてしまう。刺激を受けて前頭葉が興奮しすぎてしまうと、イライラやケアレスミスにつながり、思念ばかりがぐるぐる回ってしまうので寝付きも悪くなる。

そこで実践するのが、眠る前に単純作業で身体を動かすことにより頭頂葉に刺激を与え、前頭葉を鎮めること。運動する時間がないなら、背筋を伸ばすだけでも良い。これが「起床から11時間後」に姿勢を良くすることにつながってくる。なるほど、筋が通っている。

睡眠に大きく関係する生体リズムについても、かなりしっかりと説明されている。びっくりしたのは、睡眠に関わるだけでも3つの生体リズムがあるということ。それが「メラトニンリズム」「睡眠−覚醒リズム」「深部体温リズム」なのだ。

この3つをいかに「同期」させていくかが、睡眠も含めた一日の生活リズムを整える要諦になってくる。このリズムがずれることは「内部脱同調」と呼ばれ、これが生活の乱れや身体の不調の大きな要因になるという。上に挙げた3つの「5分間」メソッドは、どれも最終的にはこの3つのリズムを整えることに収斂してくるのだ。

本書の説明は非常にシンプルで、だからこそ説得力がある。だいたい、睡眠の本といえばまず「一日8時間は寝ろ」だの「4時間半でいい」だの、まず睡眠時間のことが書かれているのが相場なのだが、本書の何がユニークかというと、この手の「一日何時間」の話が全然出てこないのだ。

大事なのは、起きている時間。その中のたった15分(5分を3回)をその夜の睡眠のために投資するだけで、快適な睡眠と快適な翌日が手に入るとすれば、こんなに効率の良い投資はない。問題は、本書が「実践面」でどの程度効果があるかどうかなのだが……それは今後のお楽しみ。睡眠リズムを立て直すにはけっこう日数がかかるらしいので、まあ、気軽に取り組んでみたい。

ちなみに私の場合「昼に5分間目を閉じる」をここ2週間ほど実践しているが、午後の眠気がテキメンに消えた。また、帰りの電車で爆睡することが多かったのだが、最初の2〜3駅間、背筋を伸ばして座るようにしたら、これもキレイに収まった。少なくとも私には、この本のメソッドはかなり合っているようだ。