読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

自治体職員の読書ノート

仕事は福祉系。読書は雑食性。業務連絡はnsa59871atmarkexcite.co.jpへどうぞ。

【1516冊目】押見修造『惡の華』

惡の華(1) (少年マガジンKC)

惡の華(1) (少年マガジンKC)

自意識煮え煮え、行き止まり感一杯の少年少女を描いたマンガ。現時点で出ている7巻までを一気読みしたのだが、まず冒頭、主人公の春日が「自分は周りとは違う」とばかりに、中学生のブンザイでボードレールを読んでいるのが、のっけからイタい。

まあ、難解な本を読んで背伸びし、見栄を張りたがるのは大事なコトだし、中学生や高校生でそういうことをやらなくなったらむしろヤバイと思うのだが、教室でこれ見よがしにボードレールを読むというのはちょっとやりすぎか。当然のようにそのことで春日は周りに引かれるが、かといって孤立しているワケではなく、クラスメートともそれなりにうまくやっている。

問題はその後ろに座っている仲村という女生徒だ。春日の自意識が背伸び+見栄張りの単純で分かりやすいモノであるのに対し、仲村はもっと複雑でどす黒い。変わり者でクラスでも孤立しており、「クソムシ」だらけの町に絶望し、「向こう」へ行きたいと本気で切望している。

よりによってその仲村に、魔がさしてクラス一の美少女の体育着を盗んだ場面を見られてしまったところから、春日の「転落」が始まる。体育着を盗まれたのは優等生で美人の佐伯。この佐伯が春日と仲村に絡み、物語はこの3人の関係でほとんど進んでいく……のだが、この進み方がとんでもない。最初は春日が、そして佐伯が、どんどんどんどん仲村のいるダークサイドに堕ちていく。思春期の精神のドロドロを、ここまでダークな方向で煮詰め、突きつめた作品も珍しい。

正直、最初はあまりうまいと思わなかった。だが3巻あたりから、画も展開もどんどん巧くなり、読んでいて引きずり込まれ、翻弄された。予想を裏切り続ける展開。思い当たるフシがありまくりの春日の心象風景。春日と仲村の「向こう」はいったい、どこにあるのか……。

春日と仲村の暴走が極限まで行ってしまった中学編から、7巻は高校編に切り替わる。問題行動を起こしまくった春日は家ごと引っ越すことになり、高校生になっている。そこで出会ったのが長身の美人で、活発だが本好きの常磐。そこで初めて、背伸びして無理やり読むのではなく、夢中で本を読む楽しさを知る。中学編に比べるとまるでフツーの学園ラブコメ調だが、まあこれまでの流れからするとこのまま無事に終わるとは思えない。

今後、春日がどういう方向に暴走するのか、そして仲村や佐伯はどういうカタチで絡んでくるのか……。う〜ん、楽しみだ。雑誌のほうは読んでいないので、まずは8巻の刊行を待ちたい。ちなみに私はこのマンガを読んで、ボードレールは特に読みたくならなかったが、常磐の薦める島田荘司は読みたくなった。前に『占星術殺人事件』だけは読んだことがあるのだが……

惡の華(2) (講談社コミックス) 惡の華(3) (講談社コミックス) 惡の華(4) (講談社コミックス) 惡の華(5) (講談社コミックス) 惡の華(6) (講談社コミックス) 惡の華(7) (講談社コミックス)悪の華 (新潮文庫) 占星術殺人事件 (講談社文庫)